イスラボニータ2冠へDNA解析が後押し!?=最先端の“お墨付き”その信頼性は?

橋本全弘

フジキセキの血統に対する一抹の不安

皐月賞馬イスラボニータは2冠なるか、最先端の遺伝子解析はダービー制覇を後押ししているが…… 【写真:中原義史】

 日本ダービーが間近に迫った。回を重ねて今年は第81回。2011年に生産されたサラブレッド(サラ系を含む)7123頭(持込馬、輸入された外国産馬含む)の頂点に立つのは果たしてどの馬か? 今年もチャンピオンディスタンスとされる東京2400メートルの舞台で熱い戦いが繰り広げられる。

 昨年の2歳女王レッドリヴェールの参戦、3連覇がかかるディープインパクト産駒、最後のダービーに執念を燃やす大久保洋吉調教師のショウナンラグーン……など話題は尽きないなかで、やはり注目すべきは皐月賞馬イスラボニータの2冠なるかだろう。
 ここまで6戦5勝、唯一の敗戦はハープスターの後塵を拝した新潟2歳Sの2着で、依然として牡馬には先着を許していない。1番人気トゥザワールドを差して、突き放した皐月賞の勝ちっぷりからは、3冠の声が聞こえてきて不思議のないほど突出した存在ともいえる。

 ところが、下馬評は“混戦ダービー”という見方が大勢を占めている。その背景にあるのはおそらく、イスラボニータの血統に対する一抹の不安だろう。父のフジキセキはサンデーサイレンス後継種牡馬のフロントランナーとして長く活躍してきたが、産駒のダービー成績はといえば、過去11頭が出走して06年3着のドリームパスポートが最高着順。ダービーに限らず、芝2000メートルを超える距離の重賞を勝った産駒は1頭もいない。2400メートルの距離は、まさに血統的な未体験ゾーンなのである。

イスラボニータの遺伝子型は中距離タイプ

「エクイノム・スピード遺伝子検査」では中距離タイプという結果が出ている 【写真:中原義史】

 その一方で、イスラボニータの2冠達成を後押しするファクターもある。こちらは血統というより、遺伝子レベルの解析による最先端の生物科学的な“お墨付き”だ。
 イスラボニータは、クラシックシーズンを迎えるにあたって、公益財団法人・競走馬理化学研究所で「エクイノム・スピード遺伝子検査」を受けている。「エクイノム・スピード遺伝子検査」とはその名の通り、愛国のエクイノム社が研究・開発した遺伝子解析メソッド。競走馬の筋肉量をコントロールするミオスタチンと呼ばれる遺伝子の型によって距離適性を予測するものだ。

検査によって分けられるタイプは以下の3つ。
 C:C型=短距離タイプ。1000メートル〜1600メートルに向く
 C:T型=中距離タイプ。1400メートル〜2400メートルに向く
 T:T型=長距離タイプ。2000メートル以上に向く。

 イスラボニータの遺伝子のタイプは「C:T型」だという。距離の区分けが少々大雑把な印象もあるのだが、すでに2000メートルで結果を出しているイスラボニータの場合、「C:T型」の中でも、より長めの距離に向くという解釈もできるだろう。少なくとも皐月賞の2000メートルからダービーの2400メートルへの距離延長がマイナスにはならないことを、遺伝子検査の結果は示している。

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著者プロフィール

 1954年生まれ。愛知県出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社に入社。87年、中央競馬担当記者となり、武豊騎手やオグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなどの活躍で競馬ブーム真っ盛りの中、最前線記者として奔走した。2004年スポニチ退社後はケンタッキーダービー優勝フサイチペガサス等で知られる馬主・関口房朗氏の競馬顧問に就任、同オーナーとともに世界中のサラブレッドセールに帯同した。その他、共同通信社記者などを経て現在は競馬評論家。また、ジャーナリスト活動の傍ら立ち上げた全日本馬事株式会社では東京馬主協会公式HP(http://www.toa.or.jp/)を制作、管理。さらに競馬コンサルタントとして馬主サポート、香港、韓国の馬主へ日本競馬の紹介など幅広く活動している。著書に「名駿オグリキャップ」(毎日新聞社)「ナリタブライアンを忘れない」(KKベストセラーズ)などがある。

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