「何が何でも、チームに貢献する」 W杯へ“らしく”臨む今野泰幸の心境

下薗昌記

2大会連続でW杯に挑む今野。ザックジャパン不動のCBに率直な思いを語ってもらった 【下薗昌記】

 ワールドカップ(W杯)ブラジル大会開幕まであと1カ月を切った。グループCに入った日本代表は、日本時間6月15日にコートジボワール、20日にギリシャ、そして25日にコロンビアと対戦する。

 アルベルト・ザッケローニ監督率いる“ザックジャパン”のチーム立ち上げから常にセンターバック(CB)のレギュラーを務めてきた今野泰幸は、ボール奪取力に定評があり、展開力を兼ね備える。さらに複数のポジションを高いレベルでこなすユーティリティー性は、歴代の代表監督にも重宝されてきており、キャップ数は実に「78」。ブラジルW杯に向けた代表メンバーの中では、所属するJ1ガンバ大阪のチームメートである遠藤保仁に次ぐ2番目のキャップ数である。

 そんな日本代表の中心的存在であるはずの今野が、W杯を目の前にして自身のプレーに苦悩している。不調にあえぐ今季、G大阪では先発落ちも経験。大舞台を前にして、今野はどのような壁にぶち当たっていたのか。「アジア予選からほぼフルに戦ってきたし、だからこそ、本大会を逃したくない」とメンバー漏れへの危機感を募らせていたが、それは杞憂に終わった。自身のサッカー人生の集大成ともいえる大会を前に、率直な思いを語ってもらった。

意識したくなかったW杯

――W杯ブラジル大会がいよいよ来月に迫ってきましたが、今の心境とコンディションはどうでしょうか?

 チーム状況は難しい時もありましたが、4年に一度しかない大会ですし、僕の年齢を考えても最後のチャンスだと思っています。だから何としてもブラジル大会には出場したい。今は日本代表の前線にも良い選手がたくさんそろっているので、その力がかみ合えば、世界を相手にしても面白いサッカーができると思う。出場していい結果を残したいです。

――G大阪で「全力を尽くす」と公言している今野選手ですが、やはりブラジル大会に向けて気持ちが高ぶったりはしませんでしたか?

 意識したくないと思っていても、実際のところ、W杯が近づいていてくると、意識してしまいますね。まずはガンバでのプレーが大事だと思ってはいますが、頭の片隅や心のどこかに意識はあると思います。それが自分にとっての大きなプレッシャーになっているのかもしれません。4年前の南アフリカの時と違って、今回はアジア予選からほぼフルに戦ってきたし、だからこそ、本大会を逃したくないという思いもあります。

経験したと言えなかった南アフリカ大会

――今野選手にとってW杯でのプレーはどういう意味を持つのでしょうか。

 僕にとってW杯は目標と言うよりも、夢。夢のまた夢でしたね。初めて見たのはブラジルが優勝した1994年の米国大会だったのですが、試合を見たと言うよりはハイライト的な映像を見ました。(ロベルト・)バッジョ(元イタリア代表)や(元ブラジル代表の)ロマーリオ、ベベット、それにジーニョとマジーニョを覚えています。こんなすごい世界があるんだなと思いましたし、当時の僕にとっては現実離れした大会でした。

――南アフリカ大会では途中出場ながら、その大舞台を経験されました。

 やっぱり規模が大きいし、華やかな夢の大会だなって(笑)。試合にも少し出て、「良い経験をしたな」と周囲からは言われましたが、緊張しすぎていたし、プレッシャーもすごかった。3対1でチームが勝っていて、勝てば決勝トーナメント進出が決まる状況で試合に出場しましたがすごく緊張しましたよ。楽しむ余裕なんて全くなくて、地に足がついていない感じ。何かフワフワしていた状態で、「とにかく一生懸命に頑張ろう」という一心だったのでW杯を経験したという感じではなかったですね。

――6分間の出場に終わった南アフリカ大会と違って、今回は予選から不動のCBとして出場権獲得にも貢献し、本大会でも活躍が期待されています。前回大会とは今野選手の立ち位置も異なっていますね。

 チームメートに本気で上を狙っている選手がいますし、そういう仲間に刺激されて、僕もどんどん上を目指すようになった。だから、次は全力を尽くして勝ちに行く。そんな大会だと思っています。日本が世界の上位に行くために僕も勝利に貢献したいし、試合に出て活躍することが貢献になると思うんです。もちろん、大会が始まる前からベンチでいいなんて思っている選手はいないと思いますし、練習からしっかりと取り組んでコンディションを上げたいですね。

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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