成長著しい猶本光が今季“覚醒”の理由 浦和好調の立役者がなでしこで試される
転機はU−20女子W杯準決勝での惨敗
8日の国際親善試合ニュージーランド戦でなでしこデビュー。わずか7分程の出場ながらも、持ち味を発揮し確かな一歩を踏み出した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「技術を磨くだけでは世界で戦えない。身をもって痛感しました。もちろん、日本の選手は技術に秀でていると思います。けれど、ドイツやナイジェリアのような、サッカー全体のスピード感が明らかに違う相手と試合をやってみると、私たちは技術を発揮する前につぶされてしまったんです」
たとえば、ボールを「止めて」「蹴る」というサッカーの基本動作をするにしても、モーションの途中で相手の守備につかまってしまった。一瞬のうちに体を寄せられたり、パスコースに足を出されたり……。その一瞬の差が、世界水準と水準以下の差だと、猶本は実感した。
「だからといって、ドイツ人とフィジカルで真っ向勝負をしようと考えるのも、現実的ではありません。大事なのは、相手の速いプレッシャーの中でも技術を出すこと。そのための体づくりが必要だと感じたんです。でもそれを“フィジカル”っていう言葉にしちゃうと、うまく伝わらないんですよ。表現が難しいです」
そう悩んだ猶本の表現を補うとすれば、「日本人に必要なのは『技術の速さ』を鍛えること」なのではないだろうか。相手からの強いプレッシャーの中で発揮できる技術、高速で動きながらも精度がブレない技術。猶本の目指す選手像は、そのような個人の運動能力を土台として、組織の中で力を発揮する選手だと考えられる。
なでしこジャパン初招集で試される力
浦和での活躍ぶりを、なでしこジャパン(日本女子代表)の佐々木則夫監督は「決定的な仕事ができている」と評価し、5月14日に開幕するアジアカップのメンバーに招集した。猶本にとって初のなでしこジャパン入りだ。そして5月8日の親善試合で、猶本は代表デビューを果たした。出場時間は7分程度と短かったが、「思い切りプレーできた」と振り返る。だが、「組織的なプレーに関しては、新しい情報がいっぱい入ってきていて、少し混乱しています。遜色なくやれているという手応えは、あまりないです」。
なでしこジャパンという高度なコンビネーションを要するチームで、周囲と意図を合わせてプレーできるようになるには、まだ時間が掛かりそうだ。合宿招集からアジアカップ終了まで約3週間の代表活動は、猶本にとって、自らの力をなでしこジャパンというチームに還元することを学ぶ場となる。