広島・一岡竜司が見つけた「居場所」、FA人的補償でつかんだセットアップの座

週刊ベースボールONLINE

リーグトップタイの10ホールドを挙げ、カープの勝利の方程式を担う一岡 【写真=前島 進、BBM】

 広島の背番号30が躍動している。昨オフ、巨人へFA移籍した大竹寛の人的補償で広島に加入した一岡竜司は、新天地でプロ入り初の開幕1軍入りを果たすと、150キロを超す速球とキレのあるフォークを武器に「勝利の方程式」の一角を任されている。5月8日現在、10ホールドはリーグトップタイで防御率は0.00。3年目・23歳の右腕が広島の地で見つけた「居場所」は、自らの力で勝ち取ったものだ。

古巣から勝ち取ったプロ初白星

4月27日の巨人戦、延長11回に登板し古巣を三者凡退に抑える好投。その裏、エルドレッド(左)の3ランでサヨナラ勝ちを収め、プロ初勝利を手にした 【写真=前島 進、BBM】

 お立ち台へ上がると、日に焼けたベビーフェースが笑顔でほころんだ。「カープに来て、“ちかっぱ”(とても)良かったっちゃ!」

 今季最多となる3万2041人の大観衆に見届けられたプロ初勝利。しかも相手は昨年まで在籍していた古巣・巨人。故郷である福岡弁で表現した喜びにはさまざまな思いが込められていた。

 4月27日の巨人戦、両チーム無得点で迎えた延長11回に一岡竜司は3番手としてマウンドへ上がった。先頭の松本哲也をサードゴロに仕留めると、最速149キロの直球で4番・アンダーソン、5番・村田修一には力勝負を挑んで三者凡退。「巨人には特別な思いがある。おととい(25日)までは力みがあったが、今日は自分の仕事に集中し、リラックスして投げられた」

 チームはその裏、4番・エルドレッドのサヨナラ3ランで劇的勝利。勝利の瞬間は、直前までベンチ裏でアイシングをしていたが、この日の先発だったエース・前田健太から「サヨナラになるぞ! 早く来い!」と声を掛けられダッグアウトへ。アイシングをしたまま、歓喜の輪へ飛び込んだ。

異色の経歴を持つ苦労人

高校卒業後は「パソコンの資格を取りたかった」と、専門学校であるコンピュータ教育学院へ進んだ。卒業時には「Microsoft Office Specialist」の資格を取得した 【写真=前島 進、BBM】

 2011年のドラフト3位で巨人入りし、今季から広島に加入した。しかし、右腕が飛躍することになったきっかけはもう少し前にさかのぼる――。

 昨季終了後、プエルトリコのウインター・リーグへ派遣され、異国の地で汗を流した。周囲はハングリー精神あふれる同世代の若者ばかり。「アピールしないと自分の居場所はない」と、自慢の剛球に磨きをかけた。右足首の捻挫により、途中帰国を余儀なくされたが「次のシーズンへ向けて肩の状態をキープしたまま、練習を続けていた」と、オフも厳しいトレーニングを続けていた。

 そして訪れた広島への移籍。新天地ではキャンプ初日から猛アピールを続け、かつて広島にも在籍した巨人・豊田清2軍投手コーチ直伝の「高速フォーク」がさえた。「ストレートとフォークのコンビネーションが素晴らしい。打者はとても嫌だと思う」(広島・山内泰幸1軍投手コーチ)

 先発も視野にキャンプ・オープン戦を過ごしたが、首脳陣は中継ぎでの起用を決断。そして、永川勝浩、ミコライオへと続く「勝利の方程式」の一角として、プロ入り初の開幕1軍入りを果たした。

「もともと投げることが大好き。今は1軍で投げられることに喜びを感じるし、感謝しています。毎日でも投げたいし、1試合でも多くチームの勝利に貢献したい」

 広島、古巣の巨人、そしてこれまで自分を支えてくれたすべての人に感謝の気持ちを表す。大分・藤蔭高卒業後は、パソコン系の専門学校・コンピュータ教育学院へ進んだ。在学中はピザ店でアルバイトをするなど異色の経歴を持つ苦労人。それだけに、ようやくつかんだ現在の「居場所」には特別な思いがある。「これからも、1試合1試合を死ぬ気で投げます」

 23年ぶりのリーグ優勝を目指す赤ヘル軍団。広島が最後に美酒に酔った1991年生まれのセットアッパーは、悲願のリーグ優勝への使者としてこれからもフル回転を誓っている。
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