「最後にイチローは笑っている」 挑戦と進化を続ける40歳を田口壮氏が解説

構成:スポーツナビ

“世界一”の控え外野手の過ごし方

現役時代はオリックスでイチローとともにプレーし、メジャーでは2度世界一に輝いた田口壮氏 【スポーツナビ】

――田口さんが初めて世界一になったシーズン(2006年)と今のイチロー選手は、控え外野手という意味で似たようなポジションにあると思いますが、当時どういった心掛けでプレーされていましたか?

(今のイチロー選手と)同じとは僕は思っていません。ヤンキースにおける4番目、5番目の外野手で、ジラルディ監督の下でやるということと、セントルイス(カージナルス)でトニー・ラルーサ(監督)の下における4番目、5番目の外野手ということは全く意味合いが違うと思います。

 ヤンキースの場合、ほぼ控えの選手も含めて全員がレギュラー格だと思っていいです。僕の場合、セントルイスという球団で役割がちゃんとあって、「レギュラーにするにはしんどいけど、いろいろな役割ができる」というところがありました。そのあたりが僕とイチロー選手の立場の違いだと思います。(僕は)ラルーサの野球が大好きでしたから、彼と考え方が同じになるようにということを考えて、毎日監督の後ろで野球を見ていました。

――そのような日々の積み重ねがあって、田口さんはセントルイスのファンに愛されて、世界一まで上り詰めたということでしょうか?

 僕が米国の中でどうやって生きていこうかと考えた時に、自分が何をやるべきかを分かっていないと自分を生かせませんでした。レギュラー陣がもたもたしていたら、(レギュラーを自分が)取りますよという姿勢を見せてアピールしていました。
 監督と頭の中を一致させることで、自分のプレーに生きて、結果が出やすくなるということはあります。僕がなんとかできたというのは、そういうところです。たぶん、(そのような)能力は(当時の)セントルイスのメンバーの中では長けていたと思います。

代打が続くと狂うバッターの感覚

――このままイチロー選手が3割超えを続ける可能性は?

 可能性は十分にありますが、ジラルディ監督がどう使うかです。2、3日休むと(バッティングの)感覚っていうのは必ず無くなります。2、3日休んで出場というのが繰り返されると、どんどんバッティングの感覚は失われていきますから、そこをどれくらい彼が防げるかです。

――そこは田口さんも苦労しました?

 もちろんです。そこは戦いです。代打が増えようものなら大変です。今のイチロー選手は2日くらい空いても先発で使ってもらえて、4打席立っています。彼の修正能力からすると、1打席立った時点で、「あれっ?」と思ったら2打席目で直せます。ただ、代打が増えていくと、2回目はないですから、イチロー選手とはいえ、バッティングの修正が追いつかずとんでもないことになりますよ。

――そのイチロー選手にメッセージはありますか?

 僕は彼の野球を見て楽しんでいますし、1日でも長く野球をやってほしいです。ずっと一緒にやってきた選手ですから、一番思い入れの強い選手であることは間違いないです。なので、彼がどんな野球人生をこれから先、歩んでいくか楽しみです。

野茂氏、田口氏がチャリティーマラソンに参加「風化が怖い」

所属したメジャー球団のユニホームに身を包み、トークショーを行った野茂氏(左)と田口氏 【スポーツナビ】

 ともにメジャーリーグで活躍した野茂英雄氏と田口氏が4月26日、東京・国立競技場で行われた「MLBチャリティーリレーマラソン at 国立競技場 Presented by ローソンチケット」に参加した。イベントで行われたトークショーで野茂氏は「走る時やメジャーリーグを見る時など、被災地のことを思い出して考えてください」と復興支援活動の継続を呼びかけた。また、オリックス時代の1995年に阪神大震災を経験している田口氏は「東北で大震災があり、いろいろやっていますが、阪神大震災を経験している身としては風化することが一番怖いです。何かあるたびに、日本のことを考えていただければと思います」と訴えた。

 今回のイベントは改装前の国立競技場を一般ランナーが走る最後のイベントで、約3000人が来場。会場では、野球の体験イベントも行われ、野茂氏、田口氏も抽選で選ばれた参加者とともにゲームに挑戦。メジャーリーガーの打撃、投球を披露する一幕もあった。
 なお、参加費などの収益の一部は“TOMODACHIイニシアチブ”を通じてを東日本大震災の支援活動へ寄付される。

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