CL決勝は“アトレティコ”対決!? レアルの選択するスタイルが勝敗の鍵に

西部謙司

決勝でのレアルの戦い方は

CL決勝へと勝ち進んだアトレティコ。マドリーダービーとなる決勝では、どんな戦いとなるか 【Getty Images】

 バイエルンを2試合合計5−0で大破したレアルのプレーぶりは、ACミランが4−0でバルセロナを撃破した94年CL決勝を想起させる。
 圧倒的なボールポゼッションを誇る相手に対して、強固な守備ブロックと鋭いカウンターアタックを繰り返し、みるみる点差を広げて完勝したのが共通点だ。
 しかし、ポゼッションスタイルがカウンタースタイルに駆逐されると考えるのは早計だろう。

 94年にバルサを破ったミランは、翌年には戦術的にバルサの“親”であるアヤックスに敗れている。そして、その翌年にはアヤックスが堅守のユベントスに敗れ、ポゼッション型とカウンター型が交互にCLを制している。どちらのスタイルが優れているかではなく、どちらのチームが強かったか、あるいはどちらにより運が味方したか。それが歴史の教える勝敗の分かれ目ではないだろうか。

 ロナウド、ベイル、ベンゼマ、アンヘル・ディ・マリアを擁するレアルのカウンターアタックは、ジエゴ・コスタのアトレティコを上回ってる。その点で、レアルはアトレティコの戦術を吸収合併してバージョンアップしたチームといえるかもしれない。

 では、“進化したアトレティコ”は、“アトレティコ”より強いのか?
 アトレティコは最大の脅威であるレアルのカウンターアタックから身を守るために、ディフェンスラインを下げて背後のスペースを消すだろう。アトレティコはアトレティコとしてプレーするはずだ。そのとき、レアルは“アトレティコ”ではいられなくなる。

 ベイルのポジションを1つ上げるだけで3トップに変化できるレアルは“バルセロナ”にもなれるチームだ。引いた相手に、こちらも腰の引けたプレーをするのはレアルの流儀ではない。守備的だという理由で優勝監督を更迭したこともあるプライドの高いクラブなのだ。相手がバルサでもバイエルンでもないのだから、レアルが“アトレティコ”で戦う理由もない。

 では、リーグ戦でバルサに打ち負けたレアルが、果たしてアトレティコの堅陣を崩せるのか。理屈のうえでは劣化バルサではアトレティコに勝てないことになる。
 ただ、戦術的な相性だけで勝負が決まるわけではない。チョキとグーなら、必ずグーが勝つのはジャンケンであって、サッカーはそうとは限らないのだ。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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