“世界最高峰”両翼の進撃を止めたレアル システム変更とSBとの連携で攻撃を寸断

中野吉之伴

守備を重視したレアル・マドリーの両翼

出場が危ぶまれたロナウド(右)もこの日は2トップに近い形で先発出場した。 【Getty Images】

 一方、秩序だった手堅い守備から世界最速カウンターで相手ゴールを脅かすカルロ・アンチェロッティ監督のレアル・マドリー。ロッベンも試合後に「レアルのカウンターは本当に危険。すごく速いし、素晴らしいクオリティー」と認めていた。この日、膝の負傷で出場を危ぶまれていたクリスティアーノ・ロナウドはベンゼマと2トップのような形で先発出場を果たした。ドリブルで相手に突進するシーンはほとんどなかったが、オーバーラップした左SBファビオ・コエントランに見事なパスを通し、決勝点となったベンゼマのゴールを演出した。このシーン以外でもサイドに流れてボールをもらってタメを作り、相手守備が見構えたすきを突いて好パスを通していた。得点にはならなかったが47分、68分にも鋭いシュートを放っている。

 守備での貢献が求められる両サイドにはディ・マリアとイスコが起用され、二人は守備時にSBと連携し、リベリとロッベンを常にケアしていた。前半は相手のパス回しに振り回される場面もあったが、後半はほとんどの場面でしっかりとした対応ができていた。我慢強く守備をしながら、ここぞという状況ではタイミングよく攻め上がり、攻撃に厚みを加えていた。41分、左サイドからのクロスがフリーのディ・マリアに流れるビックチャンスがあったが、シュートは枠をとらえきれなかった。

第2レグも鍵を握るベンゼマとCBの攻防

 試合前にフランツ・ベッケンバウアー(バイエルン名誉会長)がレアルの攻撃で警戒するポイントは? と聞かれた際に「ベンゼマだ。気合充分なときの彼がいるレアル攻撃陣は世界最強の一つ」と答えていたが、彼の存在がレアル・マドリーのサイド攻撃に厚みを加えていた。シンプルながら正確なポストプレーでチャンスメークし、中央で相手の注意を引きつけ続けていた。ロナウドやイスコがサイドに流れるとラフィーニャが密着マークにいくが、センターバック(CB)のジェローム・ボアテングとダンテはセンターで待つベンゼマをケアするためにサポートに行けず、そのため相手にスペースを与えてしまっていた。特にショートカウンター時にはバイエルン守備陣は対応しきれずに後手を踏んでいた。1点を追うバイエルンとしては前に出ざるをえないために、第2レグでもこの攻防はキーポイントになるはずだ。

 ホームで先勝とレアル・マドリーにとっては喜ばしい結果になったが、まだすべてが決まったわけではない。アンチェロッティは「まだ勝負は分からない。何が起こるかは誰にも分からないだろう。バイエルンは彼らの哲学を変えてはこないはずだ。われわれは少し有利なだけだ」と試合後に話していたが、第2レグでバイエルンは序盤から強烈なプレッシャーで一気に点を取りに来るだろう。引いて守りに入ってしまうと飲み込まれてしまうかもしれない。セルヒオ・ラモスが「安心できるほどの結果ではない。来週、僕らはすべてを捧げてプレーするよ」と語るように、モチベーションを再び最高レベルまで引き上げることが重要だろう。

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著者プロフィール

1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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