40歳イチローは“理想の控え” 希代の安打製造機に今、求められること

杉浦大介

ヤンキースで存在感を発揮したベテランたち

開幕からベンチを温める日々が多いイチロー。しかし、理想の控えとして名門チームに必要な役割を担っている 【写真は共同】

「彼が外野にいるときはとても良い仕事をしてくれる」
 14日の試合後、ジラルディ監督もそう語って目を細めていた。今後も接戦のゲームでの守備固めはもちろん、盗塁が必要な場面での代走起用もあり得る。レギュラーを休ませたいときの先発出場も少なくないはず。そのように多様な形で貢献できれば、ニューヨークのファンからも高く評価されていくに違いない。

 過去を振り返っても、ヤンキースがビッグネームを控え選手、半レギュラーとして起用した例は枚挙にいとまがない。1990年代にはダリル・ストロベリー、セシル・フィルダー、ティム・レインズ、チリ・デイビス、近年でもラウル・イバネス(現・エンゼルス)、アンドリュー・ジョーンズ(現・東北楽天)らが存在感を発揮した。

 一世を風靡(ふうび)したベテランは、体力的に峠を越えていても、必勝の状況下でモチベーションをかきたてられる。リーダーシップも発揮できるだけに、特にプレーオフ出場を目指すチームではより有用な存在になる。

下位球団のレギュラーよりも、名門の控えがベター?

 今季は微妙な前評判だったヤンキースだが、4月18日まで5連勝を果たし、貯金4でアメリカン・リーグ東地区の首位に立った。
 先発投手、外野陣に人材が集中したアンバランスなロースターは不安だが、地区全体が混戦模様だけに、今後も優勝争いに絡んでいく可能性は高い。終盤の細かいプレーが勝敗を分けるゲームは、必然的に増えるはず。そこで重宝されるのが、スピーディーで機転の効くイチローのような選手なのである。

 エンゼルス、フィリーズらとのトレード話はたまに耳に入ってくるし、それらが急転直下でまとまる可能性は否定できない。しかし、キャリアのこの時点では、低迷が濃厚なチームのスタメンより、優勝を義務づけられた名門の“スーパーサブ”でいる方が良い。

 イチロー本人が、そんなふうに考えているかは分からない。ただ、開幕直後に状況に応じた活躍を見せてくれた後で、希代のヒットマシーンが、40歳にして新境地を見いだすことを期待しているのはもう筆者だけではないはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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