「ここで引退するのは惜しいと感じた」=フィギュア小塚崇彦インタビュー 前編

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「全日本で3位になって、少しは期待していた」

全日本選手権では3位に入り、選考基準を満たしたものの、五輪出場を逃した 【坂本清】

――全日本選手権はかつてないほど熾烈な戦いだったと思いますが、大会中はどんなことを考えていましたか?

 練習は積めていたので、あまり不安もなかったですし、あとは思い切りやるしかないなと。自分らしくいられたような気がします。

――3位という結果が出た時点ではどう感じていたのですか?

 とりあえず選考には引っかかるなと思いました。それこそ連盟が決めることなので、連盟が「全日本選手権の1位、2位、3位の選手で決めます」と言っていたわけでもないですし、僕自身は分からないなという感じでした。3位になって選考対象に引っかかるようになったというだけでしたけど、それでも期待は少ししていましたね。

――発表を待っている間はどんな気持ちでしたか?

 女子の演技を見ている間は、女子の演技がすごかったので、気持ちが紛れていたと言ったらおかしいですけど、そちらに感動して忘れていました(笑)。ただ急に発表となったときにはドキドキしましたね。選考基準に引っかかっているはずなので、「選ばれるかな、選ばれないかな」とか「ここで期待しちゃだめだろう」とかいろいろ考えていました。

――五輪に出場できないことが分かったときは、どう思いましたか?

 何て言うんだろう。ぼーっとしたというか、何かが抜けていくというか、意識がない状態でしたね。「そっかぁ」という感じです。

――高橋大輔選手が選ばれたわけですが、そのときはどのような話をされたのですか?

 その場で高橋選手の名前が呼ばれたので「頑張ってきてね」と言って、高橋選手が「頑張ってくるよ」と。それくらいですかね。

「もっと完璧にできたら上は目指せる」

選考会後は練習にも気持ちが入らなかったと苦笑い。そんな状態でも四大陸選手権では2位に入り、現役続行への手応えをつかんだ 【スポーツナビ】

――その日の夜はどう過ごされたのですか?

 僕はしくしく泣くタイプではなくて、どちらかというと「ワー!」と荒れるタイプなんです(笑)。だから1人でいたというよりは、親しい人たちみんなで集まってワイワイ話しながら、気を紛らわせていましたね。

――親しい方たちからかけられた言葉で印象に残っているものはありますか?

 僕の周りにいる人たちは「だめだったな!」とバーンとたたいてくるような人が多いので、僕もそれに乗って「だめだった!」と明るく返すような感じでしたね(笑)。でもやはり悔しかったですよね。

――納得できなかった部分もあったのでは?

 まあ、でも言われたことは仕方ないので。連盟に登録している身として、それは受けなきゃいけないし、連盟の方も決めなきゃいけない。それは納得する納得しないという問題ではないかなと思います。

――大会後、練習を再開したのはいつごろだったのでしょうか?

 滑っていたことは滑っていたんですけど、練習という練習はしていなかったです。氷に乗っていたくらいの感じです。全日本選手権が終わってから2日か3日しか空いていなかったと思います。年が明けて1月2日から四大陸選手権に向けた練習は始めていましたね。

――気持ちはすぐ四大陸選手権に向けられたのですか?

 いや、向かっていなかったです(笑)。即答ですみません。四大陸選手権に行ったときは全然気持ちが向かっていなくて、小籠包の食べ比べなんかをしながら、最初は観光気分でした。試合直前まで気持ちが入っていなかったんですけど、ジャンプを1回跳んで「これは試合だった」と我に返るという、そんな状況でしたね(笑)。

――笑。そんな状況で結果は2位でした。

 それもあって「まだまだできるんだな」と。もっと完璧にできたら上は目指せるんだなと思って、せっかく自分の体を知ることもできたし、ここで引退するのは自分としても惜しいと感じたんです。それで現役を続けるということを言ったんですけど、じゃあそれだけの理由で続けられるのかどうか。世界と戦っていくことを考えないといけないと思うので、そこでできるかどうか気持ちが決まるか。それはいまいち中途半端だったんです。でもそういう意味では今回の世界選手権に出場して、3週間でどうにかなって世界の6番になったというのは自信になりました。あそこまで点数が出たんだから、だいぶ戻ってきたなというのは感じましたね。

<後編へ続く>

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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