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JTがつかんだシンプルな勝ちパターン
鍵を握る越川とイゴールの決定力

新監督の意識改革が実を結ぶ

今季から越川が加入したJTサンダーズ。8シーズンぶりにファイナルラウンドへ進出した
今季から越川が加入したJTサンダーズ。8シーズンぶりにファイナルラウンドへ進出した【写真:アフロスポーツ】

 バレーボールのVプレミアリーグ男子大会のレギュラーラウンドが、30日に閉幕した。4月4日に開幕するファイナルラウンドには、パナソニックパンサーズ、JTサンダーズ、堺ブレイザーズ、東レアローズの4チームが進出する。


 注目は、8シーズンぶりのファイナルラウンド進出を果たしたJTサンダーズだ。


 セルビア・モンテネグロのナショナルチームや、トルコリーグでも監督を務めたベセリン・ブコビッチ氏を、新指揮官として招へい。就任直後から、意識改革に努めてきた結果が、レギュラーラウンド3位という好成績につながった一因だろう。


 意識改革と言っても、こだわるのは特別なことではなく、実にシンプルなことばかり。在籍10年目となったリベロの酒井大祐はこう言う。「難しいことは言わないんです。たとえば、二段トスを上げる時ならば『とにかく高く、ネットに近すぎないように。打てるところに上げればいい』。それだけです。高く上げるのは分かっているけど、相手のブロックも気になるし、そこまで高くは上げられなかった。だけど、ブコビッチ監督が来てからはそうじゃない。『たとえ3枚ブロックが並んでも、決められる選手がいるんだから、高さだけを意識すればいいんだ』と言われ続けてきました」。何がチームにとって長所であり、何が弱点か。1人1人で留まるのではなく、それをチームで共有する。


 まず、今季のJTにとって最大の武器としたのは、イゴール・オムルチェンと、今季から新たに加わった越川優。2人のビッグサーバーが確実に相手の守備を崩し、単調になった攻撃をブロックとレシーブで切り返す。決めるべきところはイゴール、越川に託し、着実にブレイクを取り、自チームの得点につなげること。加えて、パスやトスが万全ではない時や、スパイカーが準備できていない時、相手ブロッカーが2枚、3枚とついてきた時には、無理矢理勝負をするのではなく、一度ブロックに当ててからリバウンドを取って切り返す。決して特別ではない、実にシンプルな方法で、勝ち星を量産してきた。

大事な場面で決めきる高い決定力

 象徴的だったのが、3月16日に行われた4レグの豊田合成との一戦だった。


 四強争いを繰り広げる両チームの直接対決はし烈を極め、フルセットへと突入した。15点先取の最終セット、JTはサーブ力のあるイゴール、越川と続くローテーションでスタートした。


 序盤は7−5と豊田合成に先行されたが、前衛、後衛にかかわらず、セッターの井上俊輔はイゴール、越川にトスを上げ続けた。当然ながら豊田合成のブロッカーも、2、3枚のブロックで応戦し、何とか封じようとディフェンスするも、2人の決定力は衰えない。マークされてもブロックを弾き飛ばし、次々にスパイクで得点を量産した。


 そして、10−9とJTが1点リードして迎えた終盤には、越川の連続サービスエース。越川が「しっかり自分のサーブを打てば、絶対に崩せると思って打った」という2本のサーブに、対戦相手の豊田合成・高松卓矢も「同じような場面で、自分は力んでサーブミス。でも越川さんはあの大事な場面で決めてくる。さすが、『トップ選手は違うな』と尊敬を越えて感動すら覚えた」と脱帽した。

ファイナルラウンドの戦い方も迷いはなし

 とはいえ、裏を返せばイゴールと越川に偏りすぎている攻撃パターンは、「本当にそれでいいのか?」と見ることもできる。いくら得点力がある選手がいるとはいえ、もう少し工夫があってもいいのではないか。そんな質問をぶつけると、ブコビッチ監督は迷わず即答した。


「何の問題もない。すべて、私の指示です。絶対に落とせない試合の、ましてや最終セット。大事な時に決められる、ベストな選手が得点をするのが一番大事なこと。たとえ相手がイゴール、越川にトスが上がると分かっていても、責任を持ったエースが試合を決めるべきであり、経験のない選手にプレッシャーを背負わせることはない。大事なところで勝利に導く働きができる、できないの差が普通の選手と、トップ選手の差ですから」


 最後の1点を取る選手ではないからといって、役割がないわけではない。相手の攻撃に対してブロックでワンタッチを取る。レシーブでつなげる、ミスなくトスにする。それらもすべて当たり前に、なおかつパーフェクトにできて、最後の得点につながる。時にはアンバランスに見える攻撃パターンも、それが自チームにとって最大の武器であるならば、その方法で得点するのは何もおかしなことではない。指揮官の発想は、実にシンプルなものだった。


 来るファイナルラウンド。当然ながら相手はイゴール、越川の2枚エースをマークしてくることは予想にたやすい。


 その壁を、打ち破ることができるか。越川は言う。「イゴールも、僕も、そこで決めるのが仕事。(ファイナルラウンドを勝ち進む)確信はないけれど、自信はあります」


 男子のファイナルラウンドは、4月4日に開幕する。


<了>

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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