井上尚が最短記録、長谷川は3階級へ挑戦=4月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

3年ぶり世界戦の長谷川、トリは山中

3階級制覇を狙う長谷川穂積は4月23日、大阪でIBF世界スーパーバンタム級王者キコ・マルチネスと対戦する 【t.SAKUMA】

 23日(水)の大阪城ホールもダブル世界タイトル戦。長谷川穂積(真正)が3年ぶりの世界戦でIBF世界スーパーバンタム級王者、キコ・マルチネス(スペイン)に挑む。2度目の防衛戦となるマルチネスは前に出てくる連打型のファイター。敵地での試合経験も豊富で日本のリングも苦にしないだろう。WBCバンタム級王者時代に10度の防衛を誇り、フェザー級も制した日本の第一人者も33歳。待ちわびていた世界戦のリングで集大成を見せる。

 トリを務めるのはWBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)。6度目の防衛戦で、3位のシュテファーヌ・ジャモエ(ベルギー)を迎える。前戦で世界ランカー対決に敗れているジャモエに対し、充実の山中には死角が見当たらない。滋賀出身の山中にとっては関西凱旋試合。“神の左”の5連続KO防衛に期待だ。

村田諒太の後輩・小原がOPBF王座決定戦へ

 14日(月)の後楽園ホールでは日本タイトルを2度防衛後に返上した小原佳太(三迫)が、東洋太平洋スーパーライト級王座決定戦に臨む。対戦相手が試合の約1カ月前に変更になり、ジェイ・ソルミアノ(フィリピン)を迎える。先日、米国・ラスベガスでホルヘ・リナレス(帝拳)とのビッグマッチに敗れた荒川仁人(八王子中屋)が2年半前、大苦戦した好戦的なサウスポーは難敵だ。「サウスポーに苦手意識はない」という小原だが、一方で外国人選手との対戦はアマ時代を含めても初めて。「緊張はある」と素直に話すが「対策を練って、自分のコンディションさえ良ければ結果は出る」ときっぱり。小原は戦略的に試合を組み立てるクレバーな選手。「荒川さんからパンチ力は半端ないと聞いた」というソルミアノを前半で見極めて、「後半勝負」を目論む。東洋大学では村田諒太(三迫)の1年後輩。8連続KO勝利中の決定力にも期待だ。

 また、同日の戸部洋平(三迫)と江藤大喜(白井・具志堅)の日本スーパーフライ級王座決定戦も好カード。両者とも2度目のタイトルマッチだけにこの一戦に賭ける思いは強く、互いに強気な性格で白熱した攻防になることは必至だ。アマ経験豊富な戸部の出入りか、リーチの長い江藤三兄弟の次男・大喜の強打か、拮抗した内容になりそうだ。

元世界王者・石田が階級を超えて京太郎に挑む

元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者の石田は4階級を超えてヘビー級王者・京太郎と夢のビッグマッチを行う 【スポーツナビ】

 30日(水)の後楽園ホールでは異例の一戦。近年は米・ロサンゼルスを拠点に海外で戦い、昨年はモナコでWBA世界ミドル級王者のゲンナディ・ゴロフキン(ウクライナ)に挑戦した元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者の石田順裕(グリーンツダ)が、日本ヘビー級王者の藤本京太郎(角海老宝石)とノンタイトル戦で拳を交える。ミドル級の4階級上、18キロ以上も増量する石田は「食べても体重が増えない。食べなアカンと思ったら食べたくなくなる」と悩みを告白。3月中旬から1カ月、米国・ロサンゼルスで本場のヘビー級と100ラウンドのスパーリングを敢行中だが、渡米前で体重は88キロ。目標のヘビー級下限(90.72キロ)ギリギリにまだ2キロ以上も足りず、ここが壁と話していた。

 プロ生活14年の38歳。集大成にふさわしい挑戦を求めた。「村田(諒太)くんがダメだったから、今の日本ではヘビー級の京太郎くんしかいない」。海外で強豪に挑戦していたときと懸ける気持ちは変わらないと、石田は強調する。小学生のころ、父親の手ほどきで始めたボクシング。それから30年かけて導き出した答えが「ボクシングはスキル」という信念だ。そのスキルとスピードで“小よく大を制す”試合を見せたいと話す。元K−1王者でもある京太郎との試合展開は石田自身、「(ヘビー級で)ぶっちゃけ、僕がどんだけ動けるのかはわからない」と言うから当日を待つほかない。だが「ボクシングをバカにしていると言われるのは違う。20キロ以上も重い相手と試合をするのは怖いですよ。僕はボクシングを仕事と言っている。高いお金を払って観てくれる方に、それに見合った価値のある試合を見せます」と力強く語った。

 4月は国内で合計30興行が行われる。4日(金)に神戸市立中央体育館で行われる前日本バンタム級王者の大場浩平(真正)と米国の全勝ホープ、ランディ・カバジェロのIBF世界バンタム級指名挑戦者決定戦、10日(木)に後楽園ホールで行われる日本フライ級タイトルマッチ、世界4団体のランキングに名前を連ねる王者・村中優(フラッシュ赤羽)と2度目の世界挑戦を目指す黒田雅之(川崎新田)の世界ランカー対決と、好カードはまだまだある。

2/2ページ

著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント