小山台よ、夏、都立初の1勝を目ざせ!「僕たちの野球が終わったわけじゃない」

楊順行

「やはり実力の差でしょう」

黄色に染まったアルプス、小山台ナインに大声援を送った 【写真は共同】

 その後、「頑張れ頑張れ小山台」と黄色く膨張したアルプスの大声援を受けながら、伊藤は立ち直った。5回まで8三振を奪う力投だ。だが6回以降、4強に入った11年センバツから4年連続出場という強豪の洗礼を浴びた。6失点で計11点――小山台の、そして都立校初の春が終わった。福嶋監督はいう。
「序盤は、溝田君の低めのスライダーを見極められなくても仕方ないと思っていましたが、予想以上にすばらしかった。選手たちはけっこう落ち着いてプレーしてくれましたが、やはり実力の差でしょう。胸が震えるような大応援に応えられなかったのは、申し訳なく思います」

 11失点ながら最後まで投げきった伊藤は、
「スライダーはまあまあいいところにコントロールできましたが、なかなか振ってくれない。甘くなったストレートをとらえられました」とさばさばだ。ただ履正社・岡田監督は「やっぱりええピッチャーですね。2回に5点取ったといっても、四球の走者が4人。その回は2安打ですから」とたたえた。

そう、都立でもできるのだ

 冒頭で竹下が「振り込んできた」という振り込みの量には、へろへろティーという名物メニューも含まれている。昨年夏の西東京で準優勝し、都立の星と呼ばれる日野・嶋田雅之監督が考案したもので、1分間に35回のティー打撃と20回のもも上げを交互に3回、計3セット行うもの。「雑誌で読んで知り、実際に日野と練習試合をしたときに目の当たりにして、採り入れました。スイングスピードが速くなったし、下半身が強くなったと思います」と、ショートの西脇康一はいう。

 日野の嶋田監督は、都立のハンディを克服するため、練習方法や指導方法について情報交換しようと、福嶋監督らが創設した「高校野球研究会」のメンバーでもある。手前味噌ながら、西脇が見たという雑誌(正確にはムック)の原稿を書いたのはおそらく、僕だ。そのとき、日野の嶋田監督はこういっていた。
「私が高校生のときには国立が、そして監督になってからは城東、雪谷が夏の甲子園に行きました。都立でもやればできると、勇気を与えてくれましたね」

 そう、都立でもできるのだ。伊藤がいうには、「自分たちの野球は、これで終わったわけではありません」。ハートは「everyday my last」でも、これが最後じゃない。夏。都立初の甲子園1勝を目ざせ。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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