日本代表、「サプライズなし」の理由 15年W杯に向けたメンバー発表

斉藤健仁

稲垣、小瀧らが初選出

194センチの長身を生かしてラインアウトのボールをキャッチする帝京大・小瀧 【写真は共同】

 それでも、今回のメンバー発表で初選出選手が4名いたことはポジティブに捉えたい。まず帝京大3年のLO小瀧尚弘。大学選手権決勝での激しさと快走が記憶に新しい。2015年だけでなく、2019年に向けて手薄なLOを補強したい意図がうかがえる。ベテランLO大野均(東芝)に迫れるか。またFLには、トップリーグ(以下TL)の「ベスト15」の西原忠佑 (パナソニック)や、2シーズン前は副将も務めた佐々木隆道(サントリー)ではなくトヨタ自動車のヘイデン・ホップグッドを選出。W杯を見据えて、世界的にフィジカルや体格に優れた選手と対するFLには「インターナショナルレベルでは、なかなか日本人選手は見つからない」(ジョーンズHC)という。

 ただ「今いる選手たちよりも、ポテンシャルがあると思ったら新たに招集する」とも明言していたジョーンズHC。お眼鏡にかなったのは、2冠に輝いたパナソニックで全試合に出場し、TLの「ベスト15」に輝いたルーキーのPR稲垣啓太だ。「すばらしいタックラーです。ただしサイズを大きくしないといけない」と高い評価を受ける。昨秋から代表に選出されているFL堀江恭佑(ヤマハ発動機)と、2人のTL「新人賞」が選出されたことは、リーグの意義を高める。

 もう一人は、サントリーではWTBでも活躍し、「走るコースとセンスが良い」(ジョーンズHC)という村田大志だ。育成選手の牧田旦(帝京大4年)と合わせて、やはり、手薄なアウトサイドCTBとしての選出だ。WTB/FB藤田慶和(早稲田大2年)、昨秋のスコットランド戦で2トライを挙げたWTB福岡堅樹(筑波大2年)、WTB/FB松島幸太朗(サントリー)、育成選手のWTB石井魁(東海大2年)も含め、得点に直結するポジションには、ポテンシャルの高い若手が多いのもエディー・ジャパンの特徴。連続攻撃でほころびた相手のディフェンスの穴を、しっかりと突いてトライを挙げられる選手がW杯のピッチに立つはずだ。

スピードトレーニングの専門家を招聘

 ジョーンズHCは、5月にW杯出場が決定する今シーズンに関して「昨シーズンは自陣22m内でキックを多用してしまった。0mから100mまで勇気を持ってアタックをし続けたい」と抱負を述べた。これは、あくまでも例え話であるが、日本代表がW杯で24年ぶりの勝利を挙げるためには、攻め勝つ姿勢、戦術、スキルが大事だという信念が感じられる。攻守の切り替え、走るスピードを上げるため、4月の菅平合宿にウェールズ代表で実績を上げたスピードトレーニングの専門家、オランダ人のフランス・ボッシュ氏をスポットコーチとして招聘する。

 土台となるスクラム、ラインアウトは向上し、世界の強豪と見劣りしなくなった。「ラグビー界のiPhoneになる」、「サッカーのバルセロナのようなラグビーを目指す」と言い続けてきたジョーンズHC。選手たちにとって、W杯に向けてセレクションのような試合が続くが、どんな強豪と対戦してもトライが取り切れるよう、攻撃の精度により磨きをかけて、結果でサプライズを起こす。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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