「戦術」で変化した日本ラグビー 13−14シーズン総括

斉藤健仁

戦術面でもリードしている帝京大

大学選手権5連覇を達成した帝京大は、戦術でも他大学をリードしている 【斉藤健仁】

 大学では、5連覇を達成した帝京大が戦術もリードする。2シーズン前から本格的にシェイプを採用し、日本選手権のトヨタ自動車戦でも、相手ディフェンスを崩してトライを挙げた。時にはポッドを用いたり、自陣22m〜10mラインの間からはハイパントを多用したりするなどの戦いも見せた。

 慶応大、京都産業大、流通経済大などはシェイプ、桐蔭学園高出身のSO小倉順平(3年)が引っ張る早稲田大や、パナソニックの影響の強い同志社大はポッドを採用する。ただ、形としての戦術は用いていても、精度や成熟度は、まだまだ発展途上といったところ。

形だけではなく、さらなる進化を

 高校を見ても、近年、戦術的に工夫が見られるチームが増加。花園の決勝はシェイプの東海大仰星高、ポッドの桐蔭学園高という構図だった。桐蔭学園高が、もう少しキックも交えていれば、勝負はどうなるか分からなかったはず。桐蔭学園高は意識的に上半身を抱え込むようなタックルでボールを停滞させ、ターンオーバーを狙っていた。対する東海大仰星高も、それを予測して2人、3人でボールを持ち込むという攻防が高校で見られたことは特筆すべきた。

 日本にも戦術が浸透してきたという実感はある。今後、監督やコーチも、どういった戦術を用いて戦うかを定め、チームを年間通して鍛え上げていくという視点が必要になってくるだろう。ポッドやシェイプといった形だけではなく、そこにはフィジカル、フィットネス、スキルの強化も連動している。

 ただ、戦術はあくまでもトライを取るための方策で、試合にどう勝つかという戦略的視点も忘れることはできない。日本選手権の準決勝でサントリーに勝った東芝はキック戦略で上回り、神戸製鋼に快勝したパナソニックはディフェンスで相手の攻撃を封じた。今後は、海外の強豪チームのように、場所や相手、点差などの状況によって戦術を戦略的に変えてくるチームが出てくるのではと期待して止まない。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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