“J1新入生”徳島が迎えたホーム開幕戦 互いにエールを送るC大阪との関係とは!?

小田尚史

待ちわびたJ1のホーム開幕戦

J1ホーム開幕戦を迎えた徳島。柿谷(左)の凱旋試合にもなったこの試合は満員のサポーターで埋め尽くされた 【写真は共同】

 2005年のJ2参入から9年目の昨季、徳島ヴォルティスはJ1昇格プレーオフを制して悲願のJ1昇格を成し遂げた。06年から3年連続J2最下位を経験したクラブにとって、J1はまさに夢舞台。記念すべきホーム開幕戦となったJ1第2節・セレッソ大阪戦のチケットは即日完売となった。バックスタンドの改修工事が間に合わなかった点は痛恨ではあったが、3月8日の試合当日は1万2202人の大観衆が集まった。昨季の平均観客動員数が4348人であったことを考えると、立すいの余地もないほど埋め尽くされたスタジアムは壮観であった。ちなみに、筆者は試合当日に余裕を持って行動できるよう、試合前日に徳島入りし、当日もキックオフ4時間前の10時には会場に到着したのだが、その時点ですでに駐車場は多くが埋まっており、スタジアムへの入場を待つ列もかなりの距離が伸びていた。徳島のファン・サポーターがホーム開幕を待ちわびていた様子が、スタジアム周辺の雰囲気から存分に伝わってきた。

敗戦にもわずかに見えた光明

 徳島にとってクラブ史上初のJ1ホーム戦は、“晴れの舞台”であると同時に、リーグ開幕戦でサガン鳥栖に0−5で敗れた大敗から再起を図るシビアな試合でもあった。“鳥栖ショック”を振り払い、前へ進めるか。J1、2試合目にして早くもリバウンドメンタリティーが試される状況に置かれたのだ。その立ち上がりは決して悪くはなかった。ただし、「1失点目はファウルかどうか見えなかったので、笛を吹かれてわれわれのボールかと思った」と試合後に小林伸二監督が話した微妙な判定ではあったが、MFアレックスがMF山口蛍へのファウルで与えたFKを山口自身に決められると、その後の徳島は浮き足立った。13分にはC大阪の左サイドバック(SB)丸橋祐介に対応したMF小暮大器がいとも簡単に抜かれてサイドを突破され、クロスを上げられると、中央でDF千代反田充がクリアし切れずオウンゴールを献上。以降もC大阪のパス回しに翻弄され、中盤を支配され続けた。

 前半は「プレスを受けた時の判断が遅いところが後方にあった。やっと回避して前に行っても前で収まらない」(小林監督)という厳しい内容となった。ただし、エンドが変わった後半は、今後への光明も見いだせる戦いを披露した。開始からDF福元洋平を右SBに据えて前半のウィークポイントを処置すると、攻撃でも良い部分が出始める。69分にDF那須川将大を投入して左SBを務めていたアレックスを一列前に上げ、79分にFWクレイトン・ドミンゲスを送った前線の攻撃は迫力があった。ドウグラスを含めたブラジル人トリオを攻撃面で最大限に生かすことも、J1で生き残る一つの方法だ。点取り屋のFW津田知宏の起用法も含め、今後の小林監督の采配が注目される。

 プレー一つ一つの精度やスピード。相手の隙を逃さない決定力。J2では通用した守備ブロックがJ1では相手選手の個人技によりいとも簡単に破られてしまう。開幕戦、そして第2節と、J1とJ2の違いを肌で感じている徳島だが、「落ち着いてボールを回せばクロスまで行けるというのは今日のゲームで分かった」(MF衛藤裕)。「後半は(ディエゴ・)フォルランに1本シュートを打たれたが、それほど危ないシーンもなかった」(MF斎藤大介)と今節は攻守でやれる場面や時間帯もあった。チーム全体がJ1へ慣れること、組織をより高めること、選手個々がさらに伸びること。それらが、今後徳島がJ1で戦い抜いて行くためには必要不可欠となる。

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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