バルサを襲った『不慮のダイナミズム』 指揮官マルティーノが再びかみしめる格言
国王杯決勝進出、CLではシティを撃破。だが…
一時は契約延長オファーのうわさもあったマルティーノだが……。その未来は誰にもわからない 【Getty Images】
それでは、CLはどうか。現在のバルセロナは優勝候補の一角に値するレベルにあるのか、それとも7シーズンぶりに4強入りを果たせず大会を去ることになるのか。
果たしてバルセロナは、最も恐れていた選手の1人であるアグエロの不在に加え、デミチェリスの退場とPKによる先制点をもたらす微妙な判定の恩恵まで受け、恐らく今季最も手堅い試合を全うした末に、アウェーのエティハド・スタジアムでマンチェスター・シティを2−0で破った。
先週半ばに行われたこの試合を終えた時点で、マルティーノは全てが自身の望み通りに進んでいると感じていたことだろう。スーペルコパを勝ち取り、国王杯は決勝に進出し、リーガでは首位タイを保ち、CLでも準々決勝進出をほぼ決めた。さらには、ほどなくジョセップ・マリア・バルトメウ会長がマルティーノに契約延長をオファーする意思まで口にしたくらいだ。
失敗に終わったマルティーノの賭け
その結果、チームはラウールのリーガ通算ゴール数を上回ったメッシのゴールで一度は同点に追いついたものの、10日前に国王杯準決勝で対戦した際と同じく内容で圧倒された末、それでも引き分けで終えた前回とは裏腹にスコアでも完敗することになった。
3失点を喫し、さらにゴールポストを直撃するシュートまで打たれ、ほかにも危険な状況を何度も作られたこの試合において、バルセロナは一時もゲームをコントロールすることができなかった。普段は温厚なマルティーノもレアル・ソシエダのスタッフと口論を交わした末に退席処分となった上、試合後の会見では自身のゲームプランが間違いであったことを公に認めざるを得なかった。
成功者としてたたえられたマンチェスター・シティ戦からわずか数日、全く予期せぬ形でその敗戦は訪れた。まさにマルティーノは数十年前にパンセリが主張した『不慮のダイナミズム』の存在を、いま一度身をもって証明したのである。
とはいえ、バルセロナのフットボールが徐々に輝きを失いつつあることは確かだ。まだわれわれを魅了した当時の輝かしいプレーが断片的に見られるものの、その機会は着実に減ってきている。バルセロナが過ごすこの奇妙な過渡期は、果たしていつまで続くのか。それを知るには、然るべき月日が流れるのを待つしかない。
<了>
(翻訳:工藤拓)