被災地の「今」を走る 自転車で復興支援=ツール・ド・東北
【スポーツナビ】
三陸の雄大な自然と、被災地の今と
全国から総勢1300名超のサイクリストが集まった 【スポーツナビ】
地元東北をはじめ全国から合わせて1,314名のサイクリストが参加。コースはグランフォンド(160キロ)、メディオフォンド(100キロ)、グルメフォンド(60キロ)の3つに区分され、いずれも沿岸地域を含み、三陸の雄大な自然の中を走りながら、被災地域の「今」を見ることができる設計となっている。また、初年度となる今回は、順位やタイムを競うレースではなく、楽しく走ることを目的としたファンライド形式として開催された。
記念すべき第1回目となったこの日は好天にも恵まれ、午前6時半、朝日に照らされながら石巻専修大学(スタート/ゴール地点)をスタート。袖には地元の商店、企業のステッカーを貼ったサイクリストたちが三陸エリアへと疾走していった。
女川町から“ありがとう”の気持ちを
女川町の休憩ポイント前には津波で横倒しになった建物が今でも残されている 【スポーツナビ】
その中の1つ、女川町地域医療センター前は、サイクリストたちが立ち寄る最初の休憩ポイント。そこでは地元のお母さんたちが作ったサンマのすり身汁が提供された。女川町と言えば、サンマの水揚げ量日本一を誇っていた港町。しかし、3.11東日本大震災の大津波の被害は甚大で、休憩ポイントと道路を挟んだ海側には、今でも津波で横倒しになった江島共済会館が残されている。
この会館の無残な姿を見るだけで、被害の大きさを知ることができるが、女川町の産業振興課観光係長の土井英貴さんは、さら地の上に砂利が敷き詰められた休憩ポイントを見渡し、「このあたり一帯は住宅街だったんです」と教えてくれた。しかし、その表情には暗さはない。
「『ツール・ド・東北』のようなイベントは町を挙げて大歓迎です。自転車は前に進んでいくものですから、女川町が一丸となって今、前に進んでいることにもぴったり当てはまりますから」
東京五輪招致のスピーチで一躍時の人となった、パラリンピアンの佐藤真海さんも休憩所でほっと一息 【スポーツナビ】
「新しい町ができていく姿を1年、1年と見てほしいですね。全国の自転車愛好家の方には毎年この『ツール・ド・東北』に参加していただいて、毎年女川のおいしいものを食べてほしいです」と土井さん。そして「被災した際には全国の方に助けていただきました。ですから、こうしたイベントを通して感謝の気持ちをお伝えしたいです」と、何より“ありがとう”の気持ちを全国へ伝えたいと笑顔で話していた。
女川町の復興は急速に進んでおり、サンマの水揚げ量も着実に回復しているという。