奈良くるみ、ついに覚醒…次世代担う 158センチの元“天才少女”が初優勝
ツアー初優勝はたどり着いた必然の高み
猛暑の中で行われたリオ・オープン決勝、フィジカルを鍛えた奈良は展開力とフットワークを存分に発揮。苦手のクレーで勝利をつかんだ 【Getty Images】
だが、その“相手の土俵”で、奈良は逆に球足の遅さを生かし、コートを広く使う持ち味の展開力とフットワークを存分に発揮する。浅いボールを使って前後に振ってくる相手に対し、そのボールに素早く追いつき、鋭角なクロスを次々に打ち込んでラリーを支配。いきなりの5ゲーム連取に成功し、第1セットを6−1で先取した。
第2セットでも、奈良は常に先行し試合を優位に進めるが、中盤に差し掛かったあたりで「勝利が近づいてくると、勝ちたい気持ちが増し緊張してしまった」と認めるように硬さが目立ち始める。終盤では相手の開き直ったようなショットも入り、第2セットは4−6で落とした。
しかしファイナルセットに入ると、再び「優勝のことは考えず、やらなくてはいけないことをしっかりやった」。足を動かし、ドロップショットなども要所で織り交ぜながら、相手に的を絞らせなかった。猛暑の中、2時間を戦ってなお衰えぬフットワークと集中力も、鍛えてきたフィジカルの賜物(たまもの)だろう。この日一番のプレーが、第3セットの5−1からのゲームで飛び出したのは、その象徴だ。相手の絶妙なドロップショットに追いつくと右腕を一閃、ネット際に鋭角なショットを鮮やかに切り返した。優勝をつかんだのも、フォアのリターンウィナー。ボールの行方を見届けるや、奈良はラケットを放り投げ、空を仰ぎ見て両手でガッツポーズを決めた。
「信じられない」。頂点に立った気持ちを聞かれると、彼女は何度もそう繰り返す。だがそこは、不安や疑念を乗り越え、一歩ずつ歩みを進めてきたからこそ至った、必然の高みである。そして、まだまだ長く続く旅の、中継地点でしかないはずだ。
<了>