吉田知那美「誇りを持って前に進む」 カーリング女子の躍進に貢献した新鋭

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フジコーチが「ジーコ」と呼ばれていた真相とは

カナダで気付いた本当の思い。そのときがあって、今がある 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

――フジコーチなんですが、日本からの情報によればジーコ(サッカー元日本代表監督)と呼ばれていたと?

 アハハ、違うんです(笑)。日本の友達にも言われたんですけど、それには裏話があって、結果から言うとジーコとは呼ばれていません(笑)。タイムを取ったときにフジコーチが歩いてくるんですけど、歩いている最中に観客席から「オーレーオレオレオレー」とサッカーの音楽が流れていたんですよね。それでそのリズムに合わせてフジコーチが来たもんだから、小笠原さんが「ジーコ来たよ、ジーコ!」って(笑)。今、ザッケローニ監督なのに。

――そういうことですか(笑)。どう見ても似てないし、どうしてだろうと思っていたんですけど、これですっきりしました。そのフジコーチは、どういう指導をされるんですか?

 本当にいろんなことをします。日本のカーリングというのは、サッカーだったり野球といったスポーツとはまた違い、底辺もあまり広くなく、指導者がたくさんいるわけでもない。カーリングの教科書みたいなものもあまりなく、科学的にもカーリングのストーンがなぜ曲がるのかというのも証明されていません。すごく未知の部分が多く残る競技なんですけど、その中でもフジコーチはいろいろな統計学を出し、数字でも感覚的にも、あと精神的にもさまざまな方向からのトレーニングを考えて、取り組ませてくれます。

――やはり競技が盛んなカナダでやるのと日本でやるのは違いますか?

 すごく違いますね。技術の細かい部分であったり、試合に臨むまでのピーキング期間だったり、生活の部分であったり、メンタルの部分であったり、すべてがカーリング選手としてこうあるべきなんだ、こういうふうに五輪を目指すんだというのを、振り返ってみれば関心するじゃないですけど、すべてが違いました。

――今回のカナダ戦は6−8と健闘しましたが、戦ってみて違いは感じましたか?

 私はその試合をコーチングボックスで見ていたんですけど、ショット率で言えば日本もカナダもそんなには変わらない。ただカナダは、ミスはミスでもグッドミスが多く、私たちのミスは致命傷のものが多い。ミスのタイミングであったりですね。成功のショットは1つしかないので、それ以外のミスの差がどれだけ狭いかという部分で、ミスの幅が向こうの方が小さかったのかなというふうに見ていて思いました。ただ倒せない相手ではないなとすごく感じました。

「技術のなさや心の弱さを認められた良い大会だった」

――普段は北海道銀行に勤められていますが、どのようなお仕事をされているのですか?

 私は広報に所属しているので、CSR(企業の社会的責任)のことだったりとか、お客様満足に関するお仕事だったりですね。あと広報でいえばそれこそマスコミ関係であったりとか、イベント開催であったり、銀行体験などすべてのことのサポートをしています。

――オフの日はどう過ごしているのですか?

 基本的には土日にも練習があるので、完全なオフというのはほぼないんですけど、休みがあるときには、私は三姉妹でして、妹と姉と姉の旦那さんといつもご飯を食べています。全員カーリングをやっていますし。

――お姉さんの旦那さんもやられているんですか?

 はい、姉の旦那さんは中部電力の松村千秋さんのお兄さんなので。いろいろな話をしてすごく息抜きをしています。

――スイスのミリアム・オット選手とお話しはされたんですか? 高校生時代に手紙を書いたとおっしゃっていましたが

 いや、まだ話せてないんですよ。チャンスがあればぜひお話して、「バンクーバー五輪のとき手紙を書いた吉田です。五輪であなたと戦えました」ということを伝えたいんですけどね(編注:吉田はバンクーバー五輪開催中に、オットに「いつか五輪であなたと戦い、勝ちたい」という内容の手紙を送った。返事ももらっており、今大会にはその手紙を持参していた)。

――スウェーデン戦が終わった後には、「技術不足を感じた大会」とおっしゃっていましたが、具体的には今後どういう部分を高めたいと思っていますか?

 正直、今は五輪が終わり、胸にぽっかり穴が開いたような心境なんですけど、技術のなさや心の弱さを認められた良い大会でした。これを無駄にしてしまうと前に進めないし、フジコーチから競技終了2日後の個人ミーティングで、「五輪の舞台で知那美がこんなプレーをするなんて良い意味での誤算だった」と、私のカーリング人生でこれ以上ない褒め言葉をもらいました。この言葉を信じ、誇りを持って前に進んでいきたいなと思います。

<了>

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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