スケート大国・オランダが鳴らす警鐘 着実な強化がもたらしたメダルラッシュ
冬季五輪で過去最高のメダルを獲得
苦手としていたパシュートでも男女アベックで金メダル。オランダはスピードスケートだけで23個ものメダルを獲得した 【写真は共同】
これまで、オランダにとって冬季五輪の最多メダル数は1998年長野大会の11個。オランダ五輪委員会(NOCNSF)のアンドレ·バウアーハウス会長は、それを3つ上回る14個のメダルを今大会に期待していたが、終わってみれば2002年シドニー夏季五輪で奪った25個に迫る勢いで数字を伸ばした。
スピードスケート種目の初日となった8日、オランダはエースのスヴェン・クラマーらが活躍し、男子5000メートルで1位から3位を独占。9日の女子3000メートルではイレーネ・ウーストが3大会連続(06年トリノは3000メートル、10年バンクーバーは1500メートルで獲得)となる金メダルを奪う幸先良いスタートを切った。さらに、オランダ選手団のムードを絶頂まで盛り上げ、その後のメダルラッシュに火をつけたのは10日に行われた男子500メートルだろう。
苦手の500メートルで表彰台を独占
弟のR・ムルダーも見事な滑りを見せていた。1本目を6位で終えたR・ムルダーは2本目でリスクを負ってコーナーを攻めた。その結果、順位を大きく伸ばして3位に入り、双子で同時に表彰台へ上がることとなった。
敗北感にうちひしがれていたスメーケンスも、やがて「僕は銀を取ったんだ」と勝利の気持ちを取り戻した。苦手とする500メートルでの、オランダのメダル独占にテレビの実況も「歴史的なハットトリックです」と声が弾んだ。翌11日、女子500メートルで銅メダルを獲得したマーゴット・ボアーは「昨日の男子500メートルにとても影響された。ヤンの態度。ロナルドの6位から3位への頑張りにとてもインスピレーションを得た。私は銅メダルで十分。とてもうれしい」と語っている。ウイニングムードが高まったオランダのメダルラッシュは止まらなくなった。
オランダ人にとってスケートとは?
中でもオランダ北部フリースラント州の11の町を走る『エルフステーデントフト』はオランダスケート界最大のイベントだ。200キロにも及ぶマラソンスケートだが、スポーツ愛好家として名高いウィレム・アレキサンダー国王も若き頃、お忍びで参加して完走し、国中が大騒ぎになったこともある。
ベルフスマが所属するスケートチーム、BAMは『エルフステーデントフト』に勝つことを究極の目標に掲げている。この伝統レースは五輪の日程とかぶる可能性もあったが、ベルフスマは「もし『エルフステーデントフト』が開催されたら、僕は五輪を諦めてそっちに行く」と言うほどスケート界、いやオランダ人にとっての重要な関心事なのだ。
温暖化の影響もあり、97年を最後にこのレースは開かれてないのが残念だ。マラソンスケート集団BAMは今シーズンいっぱいで解散することを決めていたが、ベルフスマの金、そして同じくBAMに所属する38歳のボブ・デ・ヨングが1万メートルで銅メダルを取ったことで存続を再検討することにしている。