球宴で鮮烈な印象を残したデュラント“選ばれし男”レブロンの牙城を崩せるか

杉浦大介

プレーオフでの活躍が真のスターへの条件

レブロン(右)と競り合うデュラント。プレーオフでの活躍が真のスターへと上り詰めるための条件だ 【Getty Images】

 もっとも、デュラントの素晴らしさを認めた上でも、現時点で彼をレブロンと同列に近い位置に並べるのは早計に過ぎるだろう。
 シーズン中盤までの働きや、オールスターでの成績が選手としての評価に大きな影響をもたらすわけではない。大事なのはプレーオフで活躍できるかどうか。その視点で見ると、2年連続ファイナルMVPに輝いたレブロンと、依然として無冠のデュラントの間にはまだ差がある。
 2010年のファイナルで、サンダーはレブロン率いるヒートに1勝4敗で完敗している。少なくとも1度は優勝リングを手にするまで、デュラントがレブロン、コービー、あるいはマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズ)らと同じように“王者”と称されることはないはずだ。
 それでも、より多くの点を挙げたチームが勝つバスケットボールというスポーツにおいて、希有(けう)な得点力に恵まれたデュラントが魅力的な存在であることは事実。そして、しばらくは“レブロンの時代”が続くかと思われた現代において、強力なチャレンジャーが台頭したことはファンにとっても喜ぶべきことのはずである。

「真価に一般的な名声が追いついてくるのには時間がかかるもの。人々が認めるよりも数年前から、レブロンはコービーよりも優れた選手だった。ブルズが初優勝を飾って世間が納得するより以前から、ジョーダンはおそらくマジック・ジョンソン(元レイカーズ)よりも上だった。現在、デュラントが今季のMVPにふさわしいと認めていても、レブロンより優れた選手だと考えている人はほとんどいない。しかし、デュラントが今季終了時までレブロンを上回るプレーを続けた場合にはどうなるか? そのときには王位は引き継がれるのかもしれない」
『ESPN.com』のイーサン・ストラウス記者が記したそんな意見は、やはり気が早過ぎるようにも思える。少なくとも、現時点では――。

 しかし、デュラントが今季のMVPを獲得し、ファイナルでヒートを倒して初の優勝を成し遂げることがあれば、世論は確かに変わり得る。そのときには、デュラントとレブロンの間に現代スポーツ界でも最高級の“真のライバル関係”が生まれることになるはずだ。
 オールスターウィークエンドにスターンコミッショナー、コービーが不在だったことは、NBAが新たな時代の入り口にいることを指し示しているのだろう。新時代の中心になっていくのは、もちろん“キング・ジェームス”。その最強の挑戦者は、“KD(デュラントのイニシャル)”と呼ばれる必殺スコアラー。

 デュラントが輝いた2014年オールスターは、彼が名実両面でレブロンとの差を少しずつ詰めていることを改めて印象づけた。そして、今春のNBAファイナルで両雄の再対決が実現すれば、世界中のスポーツファンを興奮させるスーパーバトルになることは確実なのである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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