川澄奈穂美が初の海外移籍を決めた理由 日米デュアル・キャリアという新たな潮流
アメリカ女子サッカー、今世紀3度目の正直
移籍する女子サッカー、シアトル・レインのマフラータオルを掲げる川澄奈穂美=11日、神戸市 【共同】
アメリカには過去、WUSA(Women‘s United Soccer Association)と呼ばれたプロリーグが存在した。しかし2001〜2003年のわずか3シーズンで消滅。当時プレーしていた澤穂希は、自ら望んだのとは違う形で日本への帰国を余儀なくされた。
2009年には、新たにWPS(Women’s Pro Soccer)というプロリーグが発足した。アメリカ女子代表選手をはじめ、2008年北京五輪で活躍した欧州勢や日本勢も「国際ドラフト」で指名され、複数のなでしこたちが海を渡るきっかけになった。そして澤と宮間あやが2シーズン、丸山桂里奈、荒川恵理子、山口麻美が半〜1シーズン所属したものの、やはり3シーズンで幕を閉じた。
いずれのリーグも、資金難に陥るクラブが相次いだことが失敗の原因だった。安定した運営がなされていないことは、日本人選手の足を遠のかせる要因にもなっていた。
21世紀で3つ目の女子プロリーグ機構となるNWSLは、過去の反省に立ち「サスティナブル(持続可能)なリーグ運営」を掲げて、2013年に始まった。アメリカ、カナダ、メキシコの北中米3協会が選手の年俸を一部負担するなどして、各クラブによる過剰なマネーゲームを抑制することに成功している。
また、アメリカ協会が2015年女子W杯、2016年のリオ五輪に向け「国内リーグでプレーする選手から代表選手を選ぶ」との意向を示したことから、欧州や日本でプレーしていた有力選手たちが帰国を決断した。これによって、冒頭の川澄のコメントで紹介した通り、プレーヤーの質が保たれることも期待されている。
川澄以外にも続々。シーズン終了後には日本へ
さらに、昨年末の皇后杯でアルビレックス新潟レディースのストライカーとして活躍したティファニー・マッカーティーも、昨季は夏までアメリカで、秋から日本でプレーして、日米デュアル・キャリアを実現していた。ティファニーの成功例に続き、川澄、鮫島、ゴーベルヤネズらが両国を股に掛けた活躍をすれば、今度はアメリカ人選手の日本行きも加速する可能性がある。
女子サッカーにおいて、世界で一目置かれる存在となった日本が、アメリカ人選手にとって「目指す場所」になってくれれば、なでしこリーグに新たな魅力が生まれる。日本の女子サッカーの未来を語る上でも、有力選手が「日本から世界へ」を合言葉にすると同時に、リーグ全体が「日本の中に世界を作れ」を合言葉に、アメリカ人選手をどんどん呼び込んでくれたら面白い。
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