高梨沙羅の失速、その要因を探る=ソチでつかめなかった風とスピード

スポーツナビ

五輪に向けて若手の台頭があった女子ジャンプ界

優勝したフォクトは22歳、女子ジャンプ会は高梨と同世代の若い力が次々と台頭してきている 【写真は共同】

 最後の要因として挙げられるのは、女子ジャンプ界全体のレベルアップだ。

 優勝したフォクトは22歳。今季のW杯ランキングは2位で、高梨を追う最右翼でもある。いまだW杯での優勝はないが、2位4回、3位4回、8位入賞を逃したのは、1月12日の札幌大会(12位)のみと、安定して良い成績を残していた。
 日本にW杯の試合で来日した際、今季好調であることを尋ねられると「特に特別なことはしていない。ただ毎日毎日、トレーニングを積み重ねている。私たちのチームは、昨年、今年と徐々に良くなっている」と、ドイツチームとしてレベルが上がっていると話しており、その成果が今回の五輪金メダルにつながっている。

 また3位のマテルは、高梨より1つ年上の18歳。2012年12月のW杯ソチ大会で初優勝を飾ると、高梨が12位に終わった13年2月のW杯札幌大会でも優勝。そして、高梨が3連覇を達成した1月28日の世界ジュニア(イタリア)では2位になるなど、高梨のライバルになり得る存在でもある。
 さらに5位に入ったイタリアのインサム・エヴェリンは20歳、7位に入った伊藤有希(土屋ホーム)も19歳と、若い世代が台頭してきている。

 ここに、女子ジャンプの世界大会が始まった当時から活躍していた2位のイラシュコ、けがからの完全復帰が待たれるサラ・ヘンドリクソン(米国)などがいるということで、男子と同じように「誰でも優勝が狙える」選手がそろってきたということだろう。

 それは高梨自身も感じており、特にこの五輪シーズンに向けて「女子ジャンプのレベルは急激に、どんどん上がっている。自分もその波に遅れないように、もっともっとレベルアップしなきゃいけないという自覚があります」と、いくらW杯で勝ち続けていても、危機感を持っていた。

今回味わった悔しさは平昌五輪で晴らす

 以上に挙げた要因などが重なり、今回の高梨4位という結果につながった。もちろん、五輪という特別な舞台が、いつもとは違う結果を引き出したのかもしれない。

 それでも高梨は、4年後の五輪で勝つために前を向く。
「(4年後の平昌五輪については、)まずは行けるように、もっともっとレベルアップしないといけない。そして、もしそのチャンスを与えられたら、そこで今回と同じ悔しい気持ちを受けるのではなく、今度こそ、(支えてくれた人たちに)感謝の気持ちを伝えられるように頑張りたい」

 4年という時間は、競技者にとって長いものである。しかし、今回悔しい気持ちを味わった高梨なら、常に成長しながら、トップを維持していくはずだ。そして、その時を迎えた時には、今回以上の結果を残してくれるだろう。

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント