ジュビロ磐田、1年でのJ1復帰へ挑戦 シャムスカ、松井……再建を託された者

望月文夫

リーダーシップを発揮する新加入の松井大輔

アテネ五輪世代で2010年W杯でも共に活躍。松井と駒野の“親友コンビ”にも期待 【Getty Images】

 チームの一体感を加速させたもう一つの大きな要因が、元日本代表MF松井大輔の加入だ。松井は2010年南アフリカW杯初戦のカメルーン戦で、本田圭佑の先制弾を演出するなど、日本のベスト16入りに大きく貢献。欧州で10年間プレーした豊富な経験を期待されての加入だが、早くもその力を発揮し始めた。加入会見の席上「自分の仕事は(同じ年で仲が良い)駒野をいじること」と会場を笑わせたが、冗談かと思われた公約を連日実践。「チームの雰囲気作りに貢献している」と鈴木コーチも話す。

 昨年までは、実績のある駒野やFW前田遼一らをいじる者など、チーム内では皆無だった。若手は実績のある選手たちをリスペクトしているが、遠くから見ているのが精いっぱい。それは両者の隔たりを生む要因でもあった。ところが今季は松井のベテランいじりが笑いを呼び、若手との距離は一気に縮まった。「チームの潤滑油というか、つなぎ役として貢献度は大」と同コーチは目を細める。

 そんな松井への期待の声は、日に日に高まっている。昨年厳しい戦いを強いられた要因の一つが、ピッチ内外でチームを引っ張るリーダーの不在だと言われたが、その適任が松井だという声だ。山田は「チームを一つにまとめるために何かをやってくれるタイプ」とし、服部強化部長も「昨年、チームにリーダー的な存在がいなかったことは事実。その役割はもちろんだが、松井にはムードメーカーとしても期待したい」と、補強は大成功だった。

 そんな松井が、2月5日までの練習試合で3戦連続キャプテンマークを巻いた。監督は「チームにはリーダー役が果たせる選手が何人もいる。だからまだ決められない」と明言は避けたが、「経験がありプレーの質も高い。周囲の選手ともうまくやっている」とキャプテン有力候補の一人だと強調した。周囲の声に松井も「やれと言われれば……。指名されたら、みんなが認めてくれるようなキャプテンになりたい」と、期待に応える姿勢ものぞかせた。

課題を徐々に克服し、順調な出足

 チームの始動から約2週間後、鹿児島キャンプ中にはJ2京都と練習試合(30分×4本)を実施。今季J2で直接対決する、昇格のライバルとの注目の一戦だったが、終わってみれば9−1(主力組は4−0)と大勝した。その結果だけを見て今季を占うのは早計だが、「昨年の大きな課題を徐々に克服しつつある」と鈴木コーチは手ごたえを口にした。

 課題とは『守備の甘さ』である。シャムスカ監督以下、チームスタッフが昨年の試合映像などを分析し見つけ出した。「ボールを持った相手へのマークが十分でなかった」というのがスタッフの共通認識だ。「なぜ行かないのかを選手から聞き取ると、抜かれるのが怖いからだという。だが、逆にそれがリスクを高めることになる。相手に自由にボールを持たせることになれば、そこからの展開もあっさり許してしまう」と、リスク回避のつもりが負の連鎖を招いていたのだ。

 ところが「その部分だけで言えば、京都戦は改善されていた」と自信を見せる。前線からの守備を徹底することで相手のミスを呼び、試合ではそこからゴールも決めた。「まだまだ徹底できていないが、繰り返し言い続けることで開幕までにはさらに強化したい」(鈴木コーチ)と気合を入れた。

 そして守備の強化にも、「監督が押し進める一体感のあるチーム作りが関わっている」とチームスタッフは指摘する。理由をこうだ。「対話によって連携が密になることで、守備の場面でどう動けばいいのかを確認できる。そこから見えてくるのが守備の一体感だ」と。

 シャムスカ新監督が推し進める対話重視の路線は、チームの一体感に加え戦術の強化にも好影響をもたらした。そして昨年不在と言われたチームリーダーの役割は、新戦力の松井らが埋めるめどが立った。1年でのJ1復帰に向け、シャムスカ磐田が順調に船出したことは確かなようだ。

<了>

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著者プロフィール

1958年生まれ。ランニング、サッカー等の専門誌で編集記者。その後フリーとなり、陸上、サッカー、バレーボールを中心に専門誌等に執筆。

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