戦術から見る帝京大の5連覇=「つまらない」ラグビーから進化

斉藤健仁

早稲田はユニットでボールを動かして対抗

日本代表にも選ばれている早稲田大FB藤田は試合後に涙を見せた 【斉藤健仁】

 敗戦した早稲田大の後藤禎和監督は「失点を20点前後に抑えなければ勝てないとイメージしていた。接点で想像以上にプレッシャー受けた。後半、最初の20分の集中力で帝京大が上回った」と勝者をたたえた。ただ24点差となり「勝ったなと思った」(帝京大・岩出監督)という状況から、早稲田大も帝京大の反則に乗じて3トライを重ねる粘りを見せて、一時は5点差としたことは特筆に値する。

 早稲田大がSO小倉順平(3年)を中心に、らしい攻めを見せたのは前半の最後。3つのユニットでボールを広く動かし、相手のドリフトディフェンスが追いつかない状況を作り出す戦術「ポッド」でアタックしたが、意図的なトライは奪えなかった。「ゴール前でテンポが出なかった。ブレイクダウンの精度が大事だとは分かっているんですが……。帝京大、強かったですね」と小倉は肩を落とした。

日本選手権でトップリーグ勢に挑む

進化を続ける帝京大。日本選手権ではトップリーグ勢に挑む 【斉藤健仁】

 岩出監督に「今日、一番のトライは?」と聞くと「全部だね」と笑顔を見せて、「ボールが動くでしょ? フィットネスとフィジカルを同時に強化することは簡単にはできない。進化できている」と胸を張った。実は、帝京大にとって5連覇は通過点だった。今シーズン、岩出監督は初めて「打倒、トップリーグ」を掲げて臨んだ。

「練習の質、量を上げてきた。選手たちを成長させるために、トップリーグと対戦する準備を春から続けてきた。2019年には日本でワールドカップもあるし、社会に出てすぐに活躍するためには、社会人と同じ基準でやっていこうと早く気づいた方がいい。そうしたメッセージを発していくのもチャンピオンとしての責任です」(岩出監督)

 152人の部員を2つのグループに分け、岩出監督自身がコーチングを続けている。そして今シーズンは、2軍チーム同士の戦いであるジュニア選手権も合わせて、関東大学対抗戦、大学選手権と全勝で走りきった。戦術でも優位性を見せて、フィジカルやフィットネス、スキルを積み上げてきた上での勝利だった。
 2月16日から始まる日本選手権、帝京大はトップリーグ5位〜12位のいずれかと戦う。大学王者・帝京がどこまでトップリーグチームに迫ることができるか。「赤い旋風」の戦いはまだ終わらない。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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