ソフトBの若鷹がカリブの島国で見た景色=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

東浜がつかんだ大きな手応え

今季3勝と期待通りの活躍ができなかった東浜は、プエルトリコリーグで大きな手応えをつかんだという 【写真は共同】

 プエルトリコには5名の若鷹が飛んだ。なかでも成果を上げて福岡に戻ってきたのが東浜巨だ。昨年は鳴り物入りでのルーキーイヤーも、4月のデビュー戦で初回に満塁弾を浴びるなど打ち込まれ、2試合でファーム落ち。シーズン終盤にようやく1軍に上がり3勝をマークしたが、「挫折を味わった」と振り返った。
「2年目はローテ争いを勝ち抜いて、なんとしても2桁勝利をマークします」

 こちらも大きな手応えをつかんだ。12月下旬に帰国した時点での4勝はチームトップ、奪った42三振はプエルトリコリーグでの奪三振王だった。
「三振にこだわった。決め球を習得することができました」

 切り札は改良を加えたツーシーム。2本の縫い目に指を置くのではなく、さらに開いて、「落ち幅がフォークに近く、スピードも出る」球種に進化を遂げた。亜細亜大学時代には420奪三振を積み上げて東都大学野球リーグの新記録を更新した右腕。2年目の変身は大いに期待できそうだ。

「『ハードルができた』と喜ぶくらいじゃないと」

 また、実績は乏しいが、20歳右腕の星野大地が5セーブをマーク。育成左腕ながら派遣メンバーに抜てきされた飯田優也は、東浜を上回る投球回数と防御率(46回・防御率3.13、東浜は40回・防御率3.38)を残した。2014年の秘密兵器となるには十分な期待感を抱かせる結果となった。一方で、福田秀平と山田大樹は、シーズン途中で「クビ」になった。先述通り、ウインターリーグは本気の戦い。出番は平等ではない。特に山田は当初ドミニカリーグに参戦するも結果を残せず、単身でのプエルトリコ移動を余儀なくされた。両者ともに口にしたのが、「実力不足をあらためて痛感した」。ならば、努力と練習あるのみ。その現実を突きつけられただけでも収穫である。山田は年末年始も実家に戻らず、福岡でトレーニングを続けた。

 ソフトバンクでは10年オフからウインターリーグ派遣を継続しており、大隣をはじめ中村晃(10年オフ、オーストラリア)や柳田悠岐(11年オフ、プエルトリコ)、今宮健太(11年オフ、オーストラリア)らが海外修行を経てチームの主力に成長した実績がある。今季も中南米に加え、台湾でも6名の選手が貴重な経験を積んだ。今オフ、12名もの若鷹が海の向こうで日々鍛錬していた。

 だが、今オフに空前の大型補強を行ったソフトバンクにあって、若手が出場機会をつかむのは大変至難である。それでも、王貞治球団会長は「このような世界だからこそ」と強い口調で言う。
「選手は『乗り越えるハードルができたんだ』と逆に喜ぶくらいじゃないとね。チームに必要とされ、ファンに必要とされるよう、結局は自分を高めていかないといけないんだから」

 巨大戦力を言い訳にしたり愚痴を言っている暇があるならば、他にやるべきことは幾らでもある。ついつい超大型補強ばかりに目が行きがちな今季のソフトバンクだが、3年ぶりの日本一へのキーマンは「選手育成」の場から現れるかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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