東洋大を圧勝Vに導いた“全員駅伝”=駒澤大OB神屋氏が箱根駅伝復路を解説

構成:スポーツナビ

駒澤大、最後の3キロで追い上げられず

8区・高久(左)からたすきを受け取る9区の上村。2人の腕にはチームのスローガン「その1秒を削り出せ」が書かれている 【写真:アフロスポーツ】

――駒澤大は残念ながら3冠を逃しました。敗戦のポイントは?

 駒澤大は、各区間の最後の3キロで追い上げることができませんでした。3連覇した今季の全日本大学駅伝のときには強さを発揮できましたが、20キロを超える箱根駅伝の長丁場では、東洋大がそれを上回っていました。とはいえ、敗因という敗因を挙げるのは難しいですね。東洋大が強すぎたとしか言いようがない。駒澤大には大崩れした選手もいませんし、結果的には「力負け」ですね。
 また、駒澤大には、主力に頼った部分もあったと思います。つなぎ区間で東洋大に負けた感じはしましたね。

――出雲駅伝、全日本大学駅伝の2大会と、箱根駅伝で違いがあるとすればどこでしょうか?

 箱根駅伝は2日間で200キロを走る長丁場です。往路と復路は別々の調整をしますので、チームとして一体感を出すのが難しい。出雲駅伝、全日本大学駅伝のように、1日でドンと勢いを出せるレースとは違います。トータル200キロのレースを思い描けるチームを作れるかどうか、また選手や指導者もそれを踏まえて動けるかがポイントになります。
 今大会レース後に東洋大の選手が話した内容も、4年生や裏方など、チームの話がたくさん出ていました。東洋大は、チーム全員の思いというものを大事にしてきたのではないでしょうか。走力にプラスして、チームの一体感がすごく感じられました。ゴール後に全員で一礼したのも、まさにその現れですよね。

予選会で計れないチーム力を発揮した大東文化大

――シード権争いは10区までもつれ、し烈を極めました。

 箱根駅伝に出るチームが三層化してきていると思います。日本代表クラスの選手や、1万メートルで28分台の選手を10人そろえるチーム出てきている中で、層の厚さで勝負する中堅チームが10も15も出てきています。ちょっと体調を崩した選手が出ると、すぐにシード圏外に出てしまう。ミスが許されない本番の戦いが、ますます厳しさを増してきているのではないかと思います。

 その中で、予選会で苦しんだ大東文化大が、駅伝で力を発揮して久しぶりにシード権を取りました。予選会では測れないチーム力が駅伝で表現されたなと思いました。個人個人では目立った選手はそんなにいませんが、10人の力を合わせて好走しましたね。10人が同時に走る予選会と、たすきをつなぐ駅伝との違いをあらためて感じました。

――もしMVPを選ぶとしたら、どの選手でしょうか?

 9区を走った東洋大の2年生・上村和生選手ですね。駒澤大・窪田選手に追われるプレッシャーの中で、自分のレースに徹して、強さを発揮しました。今後、どういった成長を見せてくれるか、期待しています。

――今後、学生駅伝の勢力図はどうなると思いますか?

 全体的に底上げされている中で、目指すものの違いが出てきました。なりふり構わず優勝を目指す上位校、上位進出や過去最高を目指すチーム、シード権獲得を目指す中位の大学の3つに分かれます。最近は「何としても予選会には回りたくない」という大学が増えてきました。中位校として戦いを続けていくと、競り合いは強くなりますが、東洋大のように独走する経験は積めません。そうなると、トップに立つ駅伝をするのは難しくなります。
 東洋大は、今回のような圧勝という経験を踏んで、ますます強くなるでしょう。こういったチームには、20年の東京五輪など、世界を目指す選手が増えて、その選手に憧れて強い選手が入って高いレベルで練習するといった、好循環が生まれます。
 一方の中位校は、戦力的に勝つのはかなり難しい時代になりました。シード権を獲得するために、堅実なチーム作りをせざるを得ません。世界を目指す選手がいるチームと、「箱根駅伝が僕の最高の舞台」と考える選手が多いチームとでは、チーム内での厳しさや求めるものが変わってきます。今後、中堅以下の大学は、国際大会を狙う選手をいかに作れるかが課題になるでしょう。

<了>

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