大学ラグビー日本一の行方は?=熱い思いが奇跡を呼ぶ最終決戦

向風見也

早稲田は自信「今年はずっと上がっている」

日本代表にも選出された藤田を擁する早稲田大が打倒・帝京大の筆頭となる 【写真は共同】

 かねてから「打倒、帝京大の筆頭格」とされてきたのが、準決勝第1試合に登場の早稲田大だ。
 近年は安定したセットプレー、万事における出足の鋭さで活路を見出している。さらに今季は主力組の食事内容を見直し、王者と互角に渡り合う身体の強さをこしらえてきた。

 就任2年目の後藤禎和監督は、セカンドステージはプールDへの参戦中の練習内容をよりハードにした。そして、準決勝を待ついまは体調管理に専心。望まれる時期に最高潮を迎えるためのマネジメントをしている。

 肉弾戦では、センターから転向のフランカー布巻峻介(3年)がぶれないハート、タックル、ボール奪取の技術で存在感を示すか。攻撃が上手く回りさえすれば、18歳から日本代表入りした優雅なフルバック藤田慶和(2年)がスタンドを沸かせるだろう。フランカー金正奎副将(4年)は、クラブの可能性に期待感を抱く。

「去年はピークが早く来て、そこからの伸びがなかった。今年はずっと上がっている感じがしている」

日本代表・福岡らタレントがそろう筑波大

 そんな早稲田大とぶつかるのは、才気集う筑波大だ。今春から日本代表に定着したウイング福岡堅樹(2年)は「代表のレベルを経験した責任もある」と中軸の自覚をのぞかせ、長所の加速力を生かしてトライラインを割る。
 今季はゲームメークに四苦八苦していたであろう身長178センチの大型スクラムハーフ内田啓介主将(4年)も、「マークが厳しくなっていてそれをストレスに感じていたけど、いまはそれを頭で理解できるようになった」と、ようやく、吹っ切れたか。

 何より、注目されるは山沢拓也(1年)だ。相手守備網に近い位置から仕掛け、抜け出し、優しくも鋭利なパスを繰り出す。キックは蹴るごとに球筋を変え、相手のファンブルを誘う。インタビューが苦手な本人には嫌な表現だろうが、この人の世界観、入場チケットの価値を確実に高める。

4年生の必死さが奇跡を呼ぶ

 試合数も少なく、選手間の意識レベルにギャップがある大学ラグビーは、日本ラグビーの強化につながりにくいのでは。現在、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチら多くの関係者がそう唱えている。しかし、そんな状況下でも選手権が興行として成り立っているのは、やはり、そこにいる学生が命を燃やしているからだろう。時に必死さは奇跡を呼ぶ。なかでも、その所属先でプレーする期間が限られている4年生は、本人でも驚くような力を示すことさえある。

 ラストイヤーの炎はどんな色か。優勝争いや花形選手のプレーぶりとあわせ、こちらも注目点だ。

 例えば、帝京大のナンバーエイト大和田立(4年)。1年時から少しずつ出番を得てきたこの人、レギュラーではなくとも指揮官から「絶対的な信頼」を得ている。爆発の予感あり。

<了>

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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