ウインターカップは気持ちが大事!=アイシン比江島慎 特別インタビュー

松原貴実

2年生以降は個人でも手ごたえを感じる

比江島は3連覇が懸かった試合で22得点をマーク。エースとしての存在感を示した 【加藤よしお】

――それでは比江島さん自身が自分のプレーに手ごたえを感じたというか、選手として飛躍できたのはいつ頃だと思いますか?

比江島 やっぱりスタートで出してもらえるようになった2年生のときだと思います。その年、チームの中心選手だったアレクさんが抜けて、その穴を自分が埋めたいと勝手に思いました(笑)。アレクさんは得点力があってパスもうまい選手だったので、その穴を埋めるためには自分がもっと成長しなくちゃいけないと思って(バスケットに対する)意識が変わりましたね。それまでよりガツガツ行くようになりました。そのころは辻さんに対するマークもきつくなってきていたので、自分が引き付けてパスを出すとか、アレクさんのプレーを思い出しながら自分なりに模索していたのを覚えています。

――でも、その年の洛南はインターハイも国体もベスト8止まりでした。

比江島 そうなんですよ。前年のウインターカップで優勝した主力がいっぱい残っていたので、春先から「今年の洛南は強い」と言われていたんですが夏も秋も結果を残せず……。だけど、それだけに冬に懸ける気持ちは強かったです。「ウインターカップこそは!」とみんなが思っていましたね。福岡第一との決勝戦は接戦になりましたが、そういうみんなの強い気持ちが最後まで切れなかったことで優勝できたと思います。

――福岡第一とは翌年のウインターカップ決勝でも対戦しましたが、かなり手ごわい相手という印象でした。

比江島 手ごわかったですよ。自分が2年のときは並里さん(並里成・渡米中)を中心にしたチームでセネガル人選手(セック・エルハジ・イビラヒア)の高さもあったし、3年のときにもイビラヒアは残っていて、ジミー(早川ジミー・現豊田通商)、玉井(勇気)、狩野(狩野佑介・現東京エクセレンス)とどこからでも点が取れるチームでした。ディフェンスも良かったし、自分としては対戦して1番いやなチームでしたね。3年のインターハイでは準決勝でボロ負けしているのでリベンジしたいというのはもちろんありましたが、前半10点リードされてすごく苦しいゲームでした。それを後半逆転して勝てたことは本当にうれしかったです。

――高校3年間の中でもこの決勝戦が1番強く印象に残っていますか?

比江島 自分の中で印象に残っているというか、3年間で泣いた試合は3つあって、まず1つ目は2年のときの国体で福岡に負けた試合。これは途中まで勝ちゲームだったんですが、自分がファウルアウトしたこともあって負けました。福岡出身だけに福岡のチームだけには負けたくなかったという悔しさと、みんなに迷惑をかけたという申し訳なさが一緒になって涙が出ました。2度目は2年のウインターカップで優勝したときのうれし涙。最後は3年のウインターカップ優勝。3年のときは国体でも優勝しているんですが、ウインターカップではそのことを忘れてチャレンジャーとして戦おうとみんなで話していました。正直、3連覇が懸かっているというプレッシャーもありましたが、準決勝で(その年の)インターハイ優勝校である延岡学園(宮崎)を破ったことで勢いが付いたと思います。今、思い出しても本当に勝ててよかった(笑)

――改めて記録を調べたら、3年生の決勝戦で比江島さんはチームハイの22得点、リバウンド6、2年生の決勝戦では28得点、10リバウンドのダブル・ダブルでした。エースの存在感を示した試合と言えるのではないですか?

比江島 実は自分はチームからオファーがあって洛南に入ったわけではなく、自分から行きたいと言って迎えてもらったんです。中学のころは1対1を主体に好き勝手にプレーしている感じだったので、自分がちゃんとしたバスケットを教えてもらったのは洛南に入ってからでした。バスケットの知識とか、しっかりしたシステムとかはもちろん、ボールのないところでの動きを大切にする先生だったので、そういう面でも細かく指導してもらいました。洛南に入ったときから、もっとうまくなりたい、もっと活躍したいという気持ちはありましたが、そこで基礎をしっかり学べたことが成長につながったと思います。最後のウインターカップ決勝でそういった数字を残せたのもそのおかげだと思っています。

「勝ちたい」という気持ちが勝負を左右する大会

ウインターカップへの特別な思いを語る比江島。「勝ちたい」という気持ちが勝負を左右する大会と自身の考えを述べた 【スポーツナビ】

――洛南を卒業してから進んだ青山学院大では主力選手としてインカレ2連覇(2年、3年時)を果たし、今シーズンから所属したNBLアイシンシーホースではルーキーながらスターティングメンバーに起用され、今後の活躍がますます期待される比江島選手ですが、その土台になっているのはやはり高校の3年間だと?

比江島 はい、そう思っています。今、トップリーグでプレーさせてもらって、これまでとは違うディフェンスの精度や、抜けてもフィニッシュまで持っていけない厳しさや、自分に足りないものをたくさん感じていますが、少なくとも今ここで自分がプレーできているのは高校3年間で学んだこと、鍛えられたことが基礎というか、土台になっているのは確かだと思います。そうした自分の経験から言っても、高校時代はいろんなことを1番吸収できる年代だと思うので、今の高校生たちには「頑張ってください」と伝えたいですね(笑)

――では、その「頑張ってください」とともに、今年ウインターカップに出場する高校生たちに先輩としてひとことメッセージをお願いします。

比江島 高校時代、インターハイも国体もウインターカップもみんな全力で戦ってきたつもりですが、その中でも自分のモチベーションが1番高かったのはウインターカップのような気がします。それはウインターカップがそのチームで戦える最後の大会だということもありますが、自分の中ではこの最後の大会を勝ってこそ真の王者、最後の大会に勝つのが(その年の)1番強いチームという思いがありました。下級生のころはなんとしても先輩たちを勝たせたいと思い、3年のときはなんとしてもこのチームで優勝したいと思いました。

 よく「勝ちたいという気持ちが強いチームが勝つ」と言いますが、ウインターカップはまさにそういう大会だと思います。これは経験した者にしか分からず、うまく表現できないのですが、インターハイよりも国体よりも「勝ちたい」という気持ちが勝負を左右する大会だと思っています。ウインターカップのコートでは、自分たちのチームは「勝てる」と信じて選手の気持ちが1つになったチームほど強くなれると思うので、自分を信じ、仲間を信じ、最後の大会に悔いを残さぬよう頑張ってください!

<了>

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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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