サッカー熱上がる北朝鮮の大変革=国家を挙げてジュニア年代育成を実行

キム・ミョンウ

20年東京五輪、22年カタールW杯を視野に強化

 思えば4年前、平壌市内にある代表選手のトレーニングセンターを取材したときに感じたのは、トラップやパスの精度など、基本的な技術レベルにかなりバラつきがあったことだった。普段から現場で見ているJリーグ選手のレベルに比べると、明らかに技術で見劣りするシーンが見られ、世界との距離を感じざるを得なかった。

 北朝鮮の選手たちはスピードも速く、球際は抜群に強い。戦いに挑む気迫もあるのだが、サッカーのエリート教育を受けていない選手の集まりでは世界ではどうしても勝てない。世界の潮流に追いついていない現状を打破すべく取り組まれたのが、今回のジュニア育成なのだ。
「10年後には欧州でレベルアップした選手たちの中から、代表が出てこないといけない。ジュニア世代が国際舞台に登場するのは、20年東京五輪、22年カタールW杯あたりでしょう。目の前の大会よりも、より長期的な目で見ています」(李氏)

15年アジアカップでは鄭大世、梁勇基らの勇姿は見られる?

 それでも気になるのは、直近の北朝鮮代表の動向だろう。2015年には豪州で開催されるアジアカップも控えており、国際大会に登場する機会は増えてくる。
「南アフリカW杯予選敗退後、メンバーはすべて入れ替わったといっていいでしょう。すごく若返りました。まずはジュニアユースの各年代別W杯、五輪、W杯と大きな大会がありますが、今後の代表は先を見据えて、22歳前後の選手を中心にメンバーを構成していくと思います。15年アジアカップは若手メンバーに加えて、実績のある鄭大世(水原三星ブルーウィングス)、梁勇基(ベガルタ仙台)ら在日コリアン選手も含まれる可能性もあります。その時々でJリーグで活躍している選手がいれば、そこから他の選手が選ばれることはあり得ます」(李氏)

 個人的に期待したいのは、やはり鄭大世と梁勇基だ。次回W杯になると年齢的にもきつい時期かもしれないが、代表の座を狙えるなら狙ってほしい。せめて2015年アジアカップでは日本代表と戦う勇姿を見せてもらいたいものだ。

 いずれにしても、スペイン、イタリアに留学した北朝鮮選手たちが、段階的に成長すれば代表チームの強化につながるのは確実。東アジア全体のサッカーレベルの向上、注目度を挙げるためにもこの留学制度を定着させ、数年後、数十年後にでもビッククラブでプレーする北朝鮮選手の登場を期待したいものだ。

<了>

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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