宇佐美貴史が切り開いた点取り屋の新境地=再び輝きを放ち始めたガンバ大阪の至宝

下薗昌記

圧倒的なハイペースでゴールを量産

今季18試合で19得点。爆発的な得点力を見せつけた宇佐美は、11月も4得点をあげ2度目の月間MVPを受賞した 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 誰もが認める受賞ではなかろうか。11、12月のJ2月間MVPにガンバ大阪の宇佐美貴史が選ばれた。

「リーグ戦の終盤をいかに勝ちきれるか」と長谷川健太監督が、昇格争いに向けた最後のハードルと見込んでいた11月以降の戦いでチームは3勝1分け。無敗で乗り切った原動力は7月の首位攻防戦となったヴィッセル神戸戦で再デビューを果たしたG大阪の至宝だった。

「ここまで点を取るとは思っていなかった。期待以上だった」

 指揮官はうれしい誤算に思わず、相好を崩す。無理もない。背番号39が残した結果は18試合で19得点。得点王こそ、ジェフユナイテッド千葉のケンペスに3点及ばなかったものの、38試合に出場した千葉のエースとは比べ物にならないハイペースでゴールを量産した事が見て取れる。

思い出した点を取りまくる楽しみ

 今回の受賞対象となった4試合を振り返ると京都サンガ戦を除く3試合で計4得点。コンスタントに結果を積み重ねてきた背景にあるのが、宇佐美の確かな意識の変化にある
シーズン途中の加入だったとはいえ、紛れもなくMVP級の活躍で優勝と一年でのJ1復帰を達成した宇佐美は、シーズン終了後に2013年をこう振り返った。

「想像していた一年とは全く違ったけど、逆に想像していた以上に楽しかったり、色んな充実感もあったりした。それに自分への手応えや、自分自身のプレースタイルの変化もあった。それも想像していなかったこと。いい意味で想像できなかった一年ととらえるべきだなと思う」

 なまじ万能であるが故に、サイドアタッカー的な起用が多かった宇佐美は、シーズン終盤にかけて自らの脳裏の中で忘れかけていたFWとしての喜びを取り戻していた。

「前線で起用されるのはジュニアユースの時以来。点を取りまくる楽しみを思い出した」
 復帰初戦となった神戸戦でも再デビューの名刺代わりの2得点をたたき出し、8月にもJ2月間MVPに選ばれてはいたものの、当時は自らを点取り屋としてカテゴライズしていなかった。

 そんな宇佐美がFWとしての新境地を開拓したのが10月27日のアウエー徳島ヴォルティス戦、プロ入り初となるハットトリックを含む一試合4得点の暴れっぷりを見せた。
「FW宇佐美」を象徴するプレーが、22分にたたき出した先制点。「今までに取り慣れていない形だったのでむちゃくちゃうれしかった」と語る宇佐美。中央で巧みにステップワークを踏みながら、相手マーカーを翻弄。完全にフリーとなってニアで合わせたワンタッチゴールだった。

覚醒を支えた長谷川監督の存在

 ただ、ドイツで雌伏(しふく)の二年間を過ごしていた21歳は、自らFWとしての覚醒を迎えた訳ではない。見逃せないのは時に温かく、時に厳しく接してきた長谷川監督の存在があってこそである。6月にチームに加わった宇佐美の最大の魅力について、指揮官は当初からこう看破していた。

「シュートがまず上手かった。練習試合でアジ(ロチャ)と2トップを組ませても非常にいい関係で点が取れていた。練習試合でもいいパフォーマンスを見せてくれて、サイドじゃなくて前でもやれるなと思っていた。サイドをやらせると守備はヘタクソなんで、まだ時間がかかりそうだなと。そういう意味では前のポジションの方が手っ取り早く結果が出せるし、チームとしても生かし易いかなと思って前線で起用した」

 復帰初戦となった神戸戦以降、常に登録上はFW起用だった宇佐美だが、ゴール前でクロスをたたき込むのが最大の持ち味であるロチャや、裏への抜け出しを持ち味とする平井将生とパートナーを組んだ際には下がり気味の位置からドリブルで仕掛ける従来のスタイルでプレー。純然たる点取り屋にはまだ、ほど遠かったが、「リーグ戦の終盤、ヤット(遠藤保仁)と組むようになってからはさらにストライカーらしくなった」(長谷川監督)

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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