混戦必至の男子バレーリーグが開幕へ=山本隆弘が語るVリーグ13−14展望

構成:田中夕子

FC東京、ジェイテクトも上位に来る可能性あり

 昨シーズンは7位に終わったFC東京ですが、攻撃重視のチームで、スパイカー陣を操るセッターの山岡祐也選手はとても上手なセッターです。爆発力があるチームなので、上位に入る力は十分にあると思います。

 いい時と悪い時、非常に波があるチームなのですが、良し悪しを分けているのはサーブです。手塚大選手、グラディナロフ・ミロスラフ選手、前田和樹選手のサーブが入り出したら、勢いは止まりませんが、その反面、まったく入らずにミスばかりの時は苦しい。サーブで攻める姿勢は絶対に必要なことですが、2、3回連続で同じ選手がミスをするとリズムが作れなくなってしまうので、最低限の決まりごとは守る。その意識を徹底するだけでも、だいぶ変化が生まれるのではないでしょうか。

 代表でメンバーが抜けていない分、チーム練習も詰んできているはずです。さらに今季は豊田合成から盛重龍選手も加わり、これまで以上に戦力も充実しています。昨年のような順位に終わるチームではないでしょう。

 プレミアリーグ昇格を果たしたジェイテクトSTINGSですが、プレミアリーグ経験者の高橋和人選手、古田史郎選手が加わりました。セッターの島野俊一選手、高橋慎治選手もプレミアリーグでプレーしていましたし、ヤディエール・サンチェス選手もブラジルの優勝チーム(サダ・クロセイロ)でプレーしていた選手です。

 正直、以前は大学の延長というか、レシーブが返らなかったらサイド、返ったらクイック、というオーソドックスなバレーをするチームというイメージがありましたが、高橋慎選手が入り、多彩なコンビが組めるようになりました。さらに高橋和選手のように、相手ブロックを利用して、ちょこまかしたプレーができる選手が入って、またスタイルも変わるのではないでしょうか。サーブ力もありますし、昇格1年目とはいえ、上位争いができる力を十分に持っているチームです。

戦術による勝負の駆け引きがバレーの醍醐味

 国際試合と違って、Vリーグならではの楽しみ方はいくつもあります。選手を間近で見たい人はコートサイド、ボールの変化やゲーム全体を見たい人はコートエンド、応援団と一緒に盛り上がりたい人はスタンドなど、座る場所によっても楽しみ方も変わります。

 誰か特定の選手に注目するのも大いにアリですが、1つのプレーから、各チームがどんな戦術で臨んでいるのかを予測する、というのも見方の1つです。
 例えば、サーブです。誰を狙って、どんなサーブを打っているのか。どうしてここを狙うのか、なぜ今は緩いサーブを打ったのか。その意図まで探ってみる。そのために、今度はサーブだけでなく、ブロックを見てください。例えば、あえてリベロにサーブを打ったら、多くの人が『何でリベロに打つの?』と思うでしょう。でもそこでブロックを見ると、リベロが正確なパスを返すことを計算して、ミドルからの攻撃に対して3枚ブロックが跳んでいた。なるほど、それが戦術なのか、と分かるようになります。

 その駆け引きが一番のキーであり、バレーボールの醍醐味、面白さなのです。

 そして、今秋のグラチャンで世界トップのバレーを見た方々には、世界と日本を比べて何が違うかを見つけて、ぜひ、意見してほしいですね。僕も現役時代は技術的なことをチームでたくさん教わりましたが、最終的にすべてのことを成長させてくれたのは、ファンの方々の存在があったからです。注目される中で、時にはたたかれることもあるかもしれないけれど、次は見返してやろう、という気持ちを持つことで選手はきっと強くなる。バレー界全体でこのリーグを盛り上げられるように、選手たちの背中を押してあげてほしいですね。

<了>

山本隆弘

「駆け引きがバレーの醍醐味」と話す山本隆弘さん。ファンの存在が選手を強くすると、リーグの盛り上げを期待する 【スポーツナビ】

 1979年7月12日生。鳥取県出身。鳥取商業高校から日本体育大学に進み、2001年からV・プレミアリーグのパナソニックに所属。左利きの大砲として期待され、同年から全日本にも選出。オポジット(スーパーエース)の役割を担ってきた。アテネ、北京、ロンドンと3度の五輪に挑戦し、08年の北京五輪でその舞台に立つ。今年5月に現役を引退し、現在はテレビ解説などの活動を行っている。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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