混戦必至の男子バレーリーグが開幕へ=山本隆弘が語るVリーグ13−14展望

構成:田中夕子

東レ浮上のカギはセッターの近藤選手

昨年3位の東レは手堅く勝てるチーム。カギを握るセッターの近藤(4番)にはリーダーシップを期待したい 【写真は共同】

 昨年3位の東レアローズも、堺と同様に、ほぼメンバーが替わっていません。スタイルも、メンバーも、ベテランがうまく引っ張っていくチームカラーも変わらない。特に篠田歩選手は、試合に出ても出なくてもチームを引っ張る力を持った選手なので、今シーズンも安定した力を出し切ってほしいですね。

 カギはセッターの近藤茂選手でしょう。全日本での悔しさをリーグにぶつけて、彼自身がリーダーシップを取るような気持ちでプレーしてほしいし、しなければならない選手です。

 米山裕太選手をはじめ、アタッカー陣の能力が高く、ミスの少ないチームなのでガタガタ崩れることもない。競っていても、最終的には手堅く勝つ力を備えています。間違いなく、四強には入ってくるチームの1つです。

サントリーは新外国人に頼りすぎない攻撃が必要

 サントリーサンバーズは元米国代表のクレイトン・スタンリー選手が加入しました。35歳ですが、世界トップレベルのサーブを打つ、非常に攻撃力が高い選手です。

 ただ、懸念材料としては、だからといって攻撃がスタンリー、スタンリーになってしまうのは良くない。越川優選手がJTサンダーズへの移籍で抜け、そこに米山達也選手や柴小屋康行選手が入ってくると思いますが、上背はないのでセッターの阿部裕太選手、岡本祥吾選手がどう組み立てるか。昨年のようにオポジットのウォレス(・マルティンス=退団)、ウォレス、という攻撃パターンになってしまうと厳しいのかな、と。

 1試合に1人の選手が50本のスパイクを打つようなチームは、おそらく日本ぐらいです。何年か前にJTが(オポジットの)ゴメス、ゴメスで攻撃を組み立て、ゴメスがいくら決めても結局は勝てない、という経験をしてきたように、1人だけが打っているようじゃダメ。ミドルブロッカーの山村宏太、鈴木寛史選手を筆頭に、サイドアウトを取れる能力を持った選手が多いので、サーブレシーブが1つのポイントになるのではないでしょうか。

豊田合成とJTは外国人監督就任でどう変わるか?

山本さんは全8チームの戦力、スタイルなどを分析。「どこが抜け出すか分からない」と混戦を予想した 【スポーツナビ】

 外国人の新監督が就任したのが、豊田合成トレフェルサとJTの2チームです。

 豊田合成は毎年いいスタートを切るのに、中盤以降、失速する印象があります。ミドルの近裕崇選手のように、攻撃で得点できる選手はいますが、全体的に身長が小さいチームなので、4レグを戦い切る体力をいかに維持できるかが重要になるかな、と。
 新監督がどのような戦略で臨むのか、見てみないと分からない面もありますが、おそらく攻撃の中心は高松卓矢選手になるはずです。いい面をたくさん持った選手であるにもかかわらず、試合の中盤から自分で崩れてしまうことを自分でも反省点と感じていると思うので、4レグを通していかにコンディションや調子を維持できるかが大きなポイントになるでしょう。

 キャプテンの古賀幸一郎選手もリーダーシップが取れる選手なので、前半だけでなく中盤、終盤もどれだけ勝ち進めるか。

 全日本選手が抜けていない分、チームとしての完成度は高いはずですので、開幕からどんな戦いを見せるかが楽しみです。

 ここ数年、結果を残せていないのがJT。でもメンバーを見ると、ヨーロッパリーグで得点王を取ったことのあるイゴール・オムルチェン選手がいて、八子大輔選手や安永拓弥選手、今回のグラチャンに出場した筧本翔昂選手など、代表選手や大学時代のキャリアが豊富な選手を多く擁し、本来ならば勝たなければならない戦力を持ったチームです。

 これはあくまで僕自身の印象ですが、昨年まで現役選手としてJTと対戦した中で、僕らが勝っても、負けて悔しい、ではなく、どこかに、負けて当たり前という雰囲気が漂っていたように感じました。それは、これだけやったのに、と思えるほどの組織的なまとまりや技術力、精神力が備わっていないからではないか、と思うこともありました。
 もともとの力は常勝軍団と成り得るチームであるはずです。今季はそこにサントリーで5連覇を経験した越川選手が加わり、酒井大祐選手や町野仁志選手のように周りに対して意見することができる選手もいる。もう一度、勝つために何をすべきか、チームをピシっと引き締めることができれば、四強どころか優勝戦線に絡んでくるチームです。今季はどう変わるのか、とても注目しています。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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