検証・統一球〜打球への影響を探る〜 11〜12年は「特別」なボールだったのか

データスタジアム株式会社

選手が話す「失速感」は本当にあったのか

過去2年に比べ飛ぶようになった今季の統一球だが、データで検証してみると、決して「歴史的に飛びやすくなった」訳ではない 【写真は共同】

 では、何が要因でフィールド内打球のヒット減少につながったのか。注目したいのは9月末に発表された、第三者調査・検証委員会「調査報告書」による選手のコメントである。そこには打球の失速感に関するコメントがあった。一部抜粋すると、
【1】「2010年までであればスタンドインしたと感じる打球が、実際には失速して、アウトになったりした」
【2】「打球が転がる速度にも違いが見られ、2010年までであれば外野に抜けていたと感じるゴロが内野手に捕球されたことがあった」

 この失速感を実際のデータを使って確かめてみよう。【1】を見るために外野へのフライが本塁打になった割合、さらに外野手がアウトにした(本来アウトになるべきだったフライ打球の失策も含む)割合を算出した。

年度      HR/外野フライ    アウト+失策
2009    9.3%        58.0%
2010    9.6%        58.9%
2011    6.0%        62.6%
2012    5.6%        63.7%
2013    8.2%        62.4%

 低反発統一球による本塁打減少はよく知られているところだが、選手のコメントにもあるように外野フライがアウトになる割合も、09年、10年から11年で割合が上昇しており、失速感がアウト増につながったのは確かだと言える。

 一方で、【2】のコメントはゴロを指している。こちらはバントを除外したゴロの打球から凡打および内野安打を差し引くことで、外野へ抜けた打球の割合を算出した。

年度      ゴロが外野に抜けた割合
2009    19.3%
2010    18.7%
2011    16.2%
2012    16.7%
2013    18.4%
※バントによるゴロは除外

 10年と11年で2.5ポイントの差があるが、この差は実に658本だ。10年は4016本が内野を抜けていったが、2011年は3358本にまで落ちた。これを見る限り、ゴロも失速し内野を抜けにくくなったのは確かだと言える。選手自身が感じていた打球の失速感は数字にもこのような差で表れている。

 13年の平均得点は結果的に統一球導入前の水準程度に戻った。その中で今回は特に打球への影響を探ってみたが、本塁打だけでなく、フライ、ゴロを見ても11年、12年は特徴的であった。この2年間は今後歴史上で見ても稀有な2年間になるかは今後次第だが、現時点では特別な2年間であったことは間違いないであろう。

<了>

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日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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