高校野球の面白さ、怖さ知った神宮大会=注目集めた来春センバツの主役の行方

松倉雄太

「高校野球は最後まで何が起こるか分からない」

8点ビハインドをひっかり返した沖縄尚学。ゲームセットまで何が起きるか分からないことを現実に示した決勝となった 【写真は共同】

 20日に終了した第44回明治神宮野球大会。決勝を戦ったのは沖縄尚学高と日本文理高。沖縄尚学高が8点差をつけられた後、7回と8回の2イニングで逆転するミラクルを起こした。「まさかここまでできるとは。ビックリです」と比嘉公也監督は驚きを見せながらも、「高校野球は最後まで何が起こるか分からない」と選手に言い聞かせていたことも話した。敗れた日本文理の大井道夫監督も、「野球は怖いね。8対0でも勝てないんだから……」と勝負の恐ろしさを痛感した心境を語った。

 2009年夏、日本文理高は中京大中京高を相手に、9回2死から5点を返し、1点差に迫ったことが思い出される。今年夏の甲子園でも済美の安楽智大(2年)が、三重高に9対2と7点リードの9回に5点を返され、9対7まで迫られた。高橋光成(2年)の前橋育英高も、準々決勝で9回2死走者なしから2点差を追いつき、延長でサヨナラ勝ちしたことがあった。
 ゲームセットまで何が起こるか分からない野球の面白さ、怖さ。昨今の高校野球では、特にそれが顕著に出ているように感じられる。

沖縄尚学、日本文理は決勝での勝負を成長の機会に

 沖縄尚学高と日本文理高の選手たちも、実際に最後まで何が起こるか分からないということを頭では理解していただろうが、この決勝で身を持って体験した。逆転して秋日本一の優勝旗を受け取った沖縄尚学高の赤嶺謙主将(2年)は、「最後まで何が起こるか分からないということを再確認しました。こういう試合を(TVやスタンドで)見ていた時はただすごいなという感じでしたが、実際に自分たちが体験してみると、雰囲気がすごかった。今日のゲームを通して、最後まで気を抜かないということを考えて、これから練習していきたい」と話し、この試合でやったことを、今後は逆にやられるかもしれないということも学んだようだった。

 大逆転を許した日本文理高のエース・飯塚悟史(2年)は、「(8点差で)勝ちを信じて油断してしまった。気持ちの甘さです」と、こちらもこの試合が大きな勉強になったようだ。
 甲子園大会ではないが、高校野球・最高峰の試合である全国大会決勝を戦ったからこそ、勝負の厳しさを肌で味わったとも言える。両チームがこの経験を、どう来年へとつなげられるかが非常に楽しみだ。

1/2ページ

著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント