F1への登竜門・マカオの“屈辱的”現実=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第17回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

F1への登竜門

 マカオGPはかつてはF1への登竜門だと言われた。マカオで勝てない奴がF1なんか口にするな、ということである。その点では佐藤琢磨は合格者だが、困ったことに彼の後に続く者がいない。
 これが私には不思議なのだが、若いドライバーはマカオに行って「世界から集まる同じ志を持った奴らを蹴散らしてやろう!」、とは思わないのだろうか?
 そこで素晴らしい走りをすれば、ヨーロッパのレース関係者からアプローチがあるかもしれない。実際、私が長谷見さんと出掛けたマカオでは、彼の走りに感激したセオドールF1チームのオーナー、テディ・イップ氏から声がかかった。残念ながら当時の日本ではスポンサーが見つからず長谷見さんのF1挑戦は夢と終わったが、チャンスは転がっていると感じた。

 もちろん長谷見さんの時代と現在ではレースを取り巻く環境が違うので、一概に比べるわけにはいかない。現在の日本のトップクラスのドライバーたちは自動車メーカーと契約して安泰した生活を送っている人が多く、いまさら世界に飛び出していく気持ちになれないのかも知れない。しかし、若いドライバーはその限りではないだろう。狭い日本を飛び出して世界へ挑戦した方がいい。

メーカー支援の是非

 そこで、自動車メーカーにお願いしたいのだが、若く才能あるドライバーがいても、縛り付けないでほしい。若く才能があるドライバーが欲しいのはどこの自動車メーカーでもチームでも同じだが、その若いドライバー自身も自分の才能は自分で花開かせたいと思っているはずだ。

 支援はしても縛り付けない。そんな都合の良いことができるはずはないと言う自動車メーカーもあるだろう。だが、今マカオで走っている海外の若いトップドライバーたちは、ヨーロッパの自動車メーカーの支援を受けながら、他社のエンジンが積まれたクルマでマカオを走っているのだ。日本の自動車メーカーにもそれぐらいの懐の深さがあってもいいのではないか。

 とにかく今、世界に飛び出していく日本の若手ドライバーは不作である。ヨーロッパのモータースポーツ誌に名前が取り上げられるのは、『AutoGP』で戦う佐藤公哉、『フォーミュラ・ルノー』の笹原右京など数人のみ。そして彼らはこれまで日本の自動車メーカーの関わる若手ドライバー育成プログラムからは距離を置いてきた者ばかり。
 つまり、これまで日本の自動車メーカーが若手ドライバーの芽を摘んでいたということなのだろうか? う〜ん。

<了>

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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