韓国サムスン日本人コーチは星野門下生 芹澤裕二、“オヤジ”の教えでアジア奪還
若手捕手と苦楽をともに「統合3連覇」
優勝決定後、捕手3人とはしゃぐ芹澤。「今年はつらかったので、ものすごくうれしいです」(写真左から陳甲龍、李正植、芹澤、李知栄。いじられているのは通訳) 【ストライク・ゾーン】
プロ5年目で初めて1軍に定着した李知栄は、今季を振り返ってこう話す。「芹澤コーチは “失敗してもあれこれ考えるな。あきらめずに一生懸命やれ”といつも言ってくれました。今年はたくさんの試合(113試合)に出て、心が鍛えられたことが一番のプラスです。芹澤コーチには自分を信じて使い続けてくれたことに感謝しています」。
韓国球界が抱える深刻な「捕手の人材難」
実際、韓国では、キャッチャーが1球ごとにベンチを見ることがある。それはピンチに限ったことではない。「韓国には、コーチのステイタスの中に“サインを出すこと”があるようにも感じます。僕の場合は役割として求められるのでサインを出しています」。そう話す芹澤。郷に入っては郷に従え。海外で生きるためには避けて通れない道だ。ただそのままでは、選手のためにはならない。だから芹澤は、指導に力を入れる。
「韓国の選手は、コーチが言ったことを信用してそのまま受け入れます。だから間違ったことを教えると、大きな失敗につながってしまいます。しかも通訳を介すので、言い方、言葉の使い方は大事です。日本とのレベルの差はありますが、コーチとしての責任感はこっちの方が強いかもしれません」
韓国ナンバーワンチームのサムスン。しかし、捕手の自立という点では日本との差が大きいようだ。ではサムスンが日本のチームに勝るところは何か。「あきらめないところです。だから韓国シリーズでも巻き返しができたと思います」。芹澤の言葉通り、サムスンは今年の韓国シリーズで、1勝3敗の崖っぷちからシリーズ制覇した。王手をかけられてからの3連勝は韓国初。ここ一番での底力がサムスンの強みだ。
古巣、師、教え子…縁深い楽天との対戦へ向け
今回のアジアシリーズでサムスンは予選A組、楽天はB組に属する。両者が対戦する可能性があるのは、準決勝か決勝だ。
古巣、人生の師、教え子。芹澤は関わりの深い楽天の前で、自らの役割をどう発揮するか。「星野監督から教わったのは、“迷った時には止まるな。迷ったらゴー”です」。サムスンは「あきらめない野球」、そして芹澤の「迷わず進む判断」で、2011年以来のアジア王座奪還を目指す。
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