上原&田沢が支えるRソックス鋼の強さ

杉浦大介

「シーズンの続きという感じでやっている」

地区シリーズの貢献度で言えば、田沢は上原以上だったかもしれない 【写真は共同】

 シーズン中の成績に反し、実は地区シリーズはレッドソックスには厳しい戦いになるのではないかと考えていた。自慢の投手力と知将ジョー・マドン監督の采配だけではなく、シーズン最終週からアウェーで勝ち続けたレイズにはこの時期に必要な勢いが宿っているように見えた。今季最終戦後に4日のブレイクを挟んだレッドソックスよりも、レイズこそが“運命のチーム”と呼ばれるに相応しいように思えたのである。
 しかし……地区シリーズが蓋を明けてみれば、レッドソックスの打線はしぶとさを保ち、先発投手が試合を作り、セットアッパーのコンディションも整い、クローザーはストライクを投げ込み続けた。「いつも通り」のベースボールで、レッドソックスはレイズの“勢い”を軽々とせき止めてみせた。

「いつもより声援があるかなというぐらいで特別な感じはなかった。シーズンの続きという感じでやっている。ストライクが入って良かったです」
 第1戦後の田沢のそんなシンプルな言葉の中に、真実が含まれている。ありきたりな表現だが、1つの目標に向かって一丸となった今のレッドソックスの中では、誰かが特別なことをする必要はない。1人のスーパーヒーローや、意外なラッキーボーイが出現する必要もない。互いへの信頼感ゆえに、チーム内の様々なことが良い方向に向かっているように見える。

背番号「19」があと2度、マウンドで……

 12日から開幕するア・リーグ優勝決定シリーズで対戦するのは、昨季のリーグ王者タイガース。今季リーグ2位の得点力を誇り、昨季に三冠王を獲得したミゲール・カブレラ、2年前にサイ・ヤング賞とMVPを同時受賞したジャスティン・バーランダー、今季サイ・ヤング賞も有力なマックス・シャーザーらを擁するパワーハウスである。
 しかし……統率の取れた群は個を制す。それぞれが粘り強い打撃を続ければ、デトロイトの豪腕たちもいつか必ず消耗する。

 レッドソックスの選手たちは、ここでも普段通りの仕事を果たせば良い。そのときには、“運命”は自然と切り開かれるように思えてならない。そして、その結果として、ボストンの背番号19がもう1度、いやワールドシリーズまで含めてあと2度、マウンド上で掲げ上げられることになってももう誰も驚くべきではないのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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