高き志を持つ男・小川慶治朗=貪欲な姿勢で神戸をJ1に導く

高村美砂

8月末から4試合連続でゴールを決める

 話を戻そう。福岡戦でチーム、個人ともに勢いがつく「ゴール」を奪った小川は翌節、9月最初の試合となった32節(9月1日)のギラヴァンツ北九州戦で今季2度目となる2試合連続ゴールを奪う。残念ながら同試合では自身初となる一発退場も味わうことになったが、この警告による出場停止を天皇杯2回戦・奈良FC戦で消化すると、33節(9月15日)のV・ファーレン長崎戦、34節(9月22日)の徳島ヴォルティス戦という上位決戦でも連続ゴールを決めるなど、自身初、クラブタイ記録となる「4試合連続ゴール」でチームの勝利を後押しする。ちなみに、その徳島ヴォルティス戦で決めたゴールは本人にとっては自らの背番号に並ぶ、今季13回目のゴールだった。

「前半、苦しい展開になったが気持ちが切れることはなかったし、1点取り返したら逆転できると信じて走り続けていました。その中でようやくリズムが出てきたし、チームが連動できたことを考えれば無駄な走りではなかったし、実際にその中で1点を返して流れを引き寄せられたことが後半の逆転につながった。自分のゴールについては相馬(崇人)さんがいいボールを入れてくれると信じて走り込んだ。決まって良かった」

ゴールより1試合でも早く昇格を決めたい

 その勢いは今も続いている。36節(10月6日)のジェフ千葉戦では逆転負けを喫したものの、徳島ヴォルティス戦同様、左サイドのDF相馬のクロスに合わせて走り込み、先制ゴールを挙げるなど気を吐いた小川。

「試合前からGKとDFの間を狙うように言われていた中でしっかり走り込むことを意識しました」

 結果、現在のゴール数は、今季のチーム最多タイとなる14ゴールに。J2リーグの得点王争いにおいても、徳島ヴォルティスのFW津田知宏と並んで日本人トップタイの位置につけている。さあ、残り試合は6つ。目標の「20ゴール」を達成するには、最低でも全試合で1ゴールを挙げなければいけない計算になるが、彼の頭にあるのは、まず「自身のゴールより、チームの勝利。1試合でも早く昇格を決めて、優勝を目指したい」というものだ。

 もっとも、今シーズンを通して、ゴールへのどん欲な姿勢を示し続けてきた彼のこと。その勝利を自らのゴールによって引き寄せたいという思いは、心の奥底に秘めているはずだが。

<了>

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著者プロフィール

関西一円の『サッカー』を応援しようとJリーグ発足にあわせて発刊された、関西サッカー応援誌『GAM』『KAPPOS』の発行・編集に携わった後、同雑誌の休刊に伴い、1998年からフリーライターに。現在はガンバ大阪、ヴィッセル神戸を中心に取材を展開。イヤーブックやマッチデーブログラムなどクラブのオフィシャル媒体を中心に執筆活動を行なう。選手やスタッフなど『人』にスポットをあてた記事がほとんど。『サッカーダイジェスト』での宇佐美貴史のコラム連載は10年に及び、150回を超えた。兵庫県西宮市生まれ、大阪育ち。現在は神戸在住。

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