ファンに愛された“赤ゴジラ”嶋が引退「野球に集中すると神様がご褒美くれる」

ベースボール・タイムズ

現役引退を表明し、記者会見する西武の嶋=3日、埼玉県所沢市 【写真は共同】

 埼玉西武の嶋重宣が10月3日、所沢市内の球団事務所で引退会見を行った。“赤ゴジラ”というニックネームで、広島、西武のファンに愛された嶋。広島に所属していた2004年に首位打者と最多安打に輝いた際のエピソードなど、19年間の現役生活について振り返った。

 通算成績は1034試合に出場し、打率2割7分9厘、126本塁打、421打点。

 以下は会見での嶋の一問一答。

戦力になれないのであれば、ユニホームを脱ぐしかない

 今シーズンをもちまして、引退することに決めました。クライマックスシリーズの懸かった大事な時期に、すみませんという感じです。

――今、引退を決意して一番に思うことは?

 先輩方が引退するのを見てきて、「僕だったら泣くんやろうな」と思っていたんですけど、すごくすっきりしています。

――引退を最初に伝えた方は? また反応は?

 妻です。
「引退する」と決めていたわけではなく、ここ1年くらいそういう話が出ていました。開幕1軍にいましたが、その後、2軍での生活が続きました。そういうことが続くと、引退を考えた上での話し合いが増えてきます。そういう中で、「引退するわ」と言ったんですかね? 定かではないんですけど、「よく頑張ったんじゃない?」という感じで話は終わりました。

――引退を決意した最大の理由は?

 この歳になれば1年、1年が勝負で、引退と戦ってきました。オフシーズンがあると思うのですが、年齢を重ねるにつれ、オフシーズンというものが無くなってくるんですね。10、11、12、1月にみんなが休んでいる間、歳を取れば取るほど、来年に向けて調整をしていきます。その中で与えられた打席は、ピンチヒッターだと(1シーズンに)50〜60打席。その50〜60打席に対して、1年間ずっと体を使い続けるのは正直、プレッシャー、ストレスもありました。気持ち的に苦しい部分をすごく感じていましたね。8月に2軍で打撃も好調になってきて、3割5分くらい打ったんですけど、その時期に1軍に呼ばれず、自分でも「潮時かな」と思いました。「戦力になれないのであれば、ユニホームを脱ぐしかない」という気持ちになりました。

バッターは振ったものが勝つ世界

――プロはどういう世界でしたか?

 19年間やってきましたが、非常に厳しい世界でした。入った当初、それを第一に感じましたね。相当の覚悟を持ってやらないと、プロ野球界では生きていけないと1、2年目で感じました。逆にそれを早い段階で感じられたからこそ、自分が何をやらなければいけないのか、どうすれば1軍で生活していけるのかを明確に考えて、行動に移した結果、10年目に首位打者という形になったと思うんですよね。そういう意味で、とにかく苦労はしましたけれども、バッターは振ったもの勝ちというか、やったものが勝つ世界だと思っていました。やった結果を残せたのは自信になりましたし、すごくうれしかったことですね。

――2軍でプレーしている木村文紀選手を含め、後輩に伝えたいこと、期待したいことを教えて下さい。

 木村選手を含め、投手から野手に転向するプレイヤーは増えていると思います。木村選手はすごく能力が高いと思います。彼には今年、「オフは遊んでいる場合じゃないよ」とずっと言っています。「何かひとつ犠牲にして、野球に集中しなさい」という話をしています。僕も「好きなものをひとつやめろ。その分、野球に全部費やせ」と言われて、野手に転向してからそういう気持ちでやってきたんですね。その結果、1日の生活の中で野球の時間が増えました。「自分の好きなことをひとつ犠牲にして、その分を野球に集中すると、神様がご褒美をくれるんじゃないか」という話を若い選手にしていますね。

――今後の道はどう考えていますか?

 引退を決意してまだ数日です。今まで支えてくれた家族、娘たちと、やっとゆっくりする時間ができたと思っています。子どもにやめることを言ったら、「やめるんだ」くらいのそっけない感じで、「早く遊園地に連れて行って」という感じだったので、家族でゆっくりして、どこかに行ければと思っています。

――今、一番感謝の気持ちを伝えたい人は?

 やはり両親ですね。こういう強い体に生んでくれました。1年間戦うのって、そんなに楽ではないんですよね。1軍でプレーできるような体に生んでくれたのは感謝しないといけないです。逆に、ここでプロ野球生活は終わりますけど、まだまだ親に恩返しをしていきたいと思います。これからも親を大事に、いつまでも大事にしていきたいと思います。そして感謝していきたいと思います。

――ファンにメッセージを。

 僕は広島カープ、西武ライオンズですごく素晴らしいファンに恵まれて、すごく愛情のある、優しい言葉をかけてもらってプレーすることができました。選手って、不安になるときがあると思うんですよね。そのときに、ファンのそういう温かい声援が本当に背中を押してくれるんですよね。僕もそうやって背中を押されて頑張ってこられました。そのありがたさを大事にして、これから第二の人生を歩んでいきます。これからも西武ライオンズで頑張っている選手たちを、同じような気持ちで応援していただけたら本当にうれしく思います。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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