劣勢の中で存在感を発揮した本田圭佑=欧州王者に完敗も前線で孤軍奮闘

後藤健生

期待に反して勝ちきれないロシア勢

体を張ったキープ力をいかしてチャンスを作り出した本田(右) 【Getty Images】

 日本で「インテンシティー」という言葉がはやったことがある。サッカー日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督が記者会見で「インテンシタ」というイタリア語の単語を口にしたのがきっかけだった。「プレー強度」という訳語が与えられているが、なかなか概念がつかみにくい言葉だろう。だが、昨季の欧州王者バイエルン・ミュンヘンとCSKAモスクワの試合を見れば、「インテンシティー」の意味がより具体的に理解できるのではないだろうか。

 天然ガスなど豊富な資源をテコに経済発展を遂げつつあるロシア……。その経済力を背景に、ロシアのクラブは有能な外国人選手を次々と獲得し、ここ数年、欧州の舞台でのロシア勢の活躍には大きな期待が集まっている。
 しかし、ロシアのクラブはなかなか結果が出せない。その原因こそが、まさに「インテンシティー」の差なのである。

 一方、バイエルンはジョゼップ・グアルディオラ新監督を迎え、新しいスタイルのサッカーへの転換を模索しているところだ。選手たちはまだ、グアルディオラ監督の新しいサッカーを消化するのに精いっぱい。リーグ戦では結果こそ出ているものの、内容的にはまだまだと言わざるを得ない。

横たわる「インテンシティー」の差

 しかし、CSKA戦ではバイエルンはすばらしいテンポのサッカーを見せた。

 CSKAの選手たちは、当然のように自陣のペナルティーエリア前でしっかりと守備組織を作るが、その守備のブロックの前でバイエルンの選手たちは楽々と、そして楽しそうにボールを回していた。
 守備の人数が足りていても、相手との間合いをあけすぎたのでは、バイエルンの選手たちにとってはノーマークの状態に等しい。そして、CSKAの守備はまったく機能しなくなってしまった。
 CSKAは守備陣にGKのイゴル・アキンフェイフをはじめ、代表クラスのDFをそろえており、決して守備力の弱いチームではない。CSKAの守備は国内の試合では十分に通用する。だが、バイエルンのような相手には通じないのだ。

 ロシアリーグでは互いに楽にパスを回すサッカーを展開することが多い。下位チームが上位に挑む場合でも、激しいプレッシャーで相手の良さを消すよりもパスをつないで自分たちのサッカーをしようとする。その積み重ねが、「インテンシティー」の差ということにつながっていくのだろう。

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著者プロフィール

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、観戦試合数はまもなく4800。EURO(欧州選手権)は1980年イタリア大会を初めて観戦。今回で7回目。ポーランドに初めて行ったのは、74年の西ドイツW杯のとき。ソ連経由でワルシャワに立ち寄ってから西ドイツ(当時)に入った。

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