『ももクロ×オリンピック』国立へ聖火を!=演出家・佐々木敦規氏インタビュー

スポーツナビ

2020年東京五輪を祝して国立競技場に灯された聖火、いつの日かももクロちゃんたちも…… 【写真は共同】

 8.4日産大会における『ももクロ×スポーツ』。演出家・佐々木敦規氏へのインタビュー第2回目は、猫ひろしによるライブ中のフルマラソン挑戦、聖火台に火を灯した意味を聞いた。
 その中で出てきたももいろクローバーZとマラソンの共通項。ももクロのストーリーは山あり谷ありのマラソンのようであり、しかもペースを考えない掟破りの走法なのだという。そして、開催が決定した2020年東京五輪。ももクロとオリンピックの融合は果たしてあるのだろうか?

 一方、話題は12月23日開催のももいろクリスマス2013にもおよび、「極寒の西武ドーム。覚悟をしてください」と佐々木氏。ももクロのメンバー同様、これまで数々の試練にさらされてきたモノノフ(ももクロのファン)はこの冬、史上最大の“覚悟”を迫られることになりそうだ。

 また、復活を果たした新日本プロレスとももクロも縁深い間柄。8.11新日本プロレスG1クライマックス両国国技館大会で、実際に佐々木氏が体感した会場のすさまじいまでの“熱”は、ももクロを支えるモノノフたちの“熱”と同じだった――。

 スポーツナビがももクロを取り上げるのは、やっぱりおかしいだろって? 「いいか、おまえらー! 読む前からおかしいなんて決めつけるバカいるかよー!!」

「メンバー5人も猫ちゃんも変わらない」

――では、猫ひろしさんのマラソンのお聞きしたいのですが、猫さんのマラソンのアイデアはどういうタイミングで浮かんできたんでしょうか?

「スポーツということで言うと、1枚足りないなと思っていて、まあ僕が欲張りな性格ということもあるんですが、100m走とサッカーというものがあって、その時にもう1枚欲しいと思ったんです。でも、それはたぶんメンバーじゃないなと。やっぱり一生懸命やることに関して、メンバーはステージもあるし、彼女たちができることはたぶんないな、メンバーはこれ以上できないなと思いました。それじゃあ何ができるだろうっていうときに、ひとつの縦軸が欲しかったんですよ。スポーツをやり続けるという縦軸が。スポーツをやり続ける縦軸が何かと思ったときに、だいたい時間にして3時間から4時間ぐらいのライブで、じゃあ誰かにずっと走っててもらおうって思って(笑)。42.195キロをライブ中に走るなんてことはないですから」

――本当にライブ中にマラソンを走り切るなんて聞いたことがないです。

「人選で色んな方を思い描いたんですけど、僕はバラエティ出身ということもあり、本当のスポーツ選手が走り続けるよりも、そうじゃない人が一生懸命走り続ける方が感動が大きいと思ったんです。そこに猫ちゃんといういい人材がいたので、声をかけたら二つ返事で『やりたい!』って答えが返ってきたんですよね。でも、真夏で熱いですし、ずーっと同じ場所を周回するという悪条件だったんですが、それでも猫ちゃんはやってくれると言ってくれたんです。
 本当に楽しいライブをやってて、音楽があり、特効があり、照明があり、布袋さんがカッコよく演奏して、そういうド派手なパフォーマンスをやっている中、スタジアムの外で一歩、一歩ゴールに向けている全力もあるじゃないですか。そこの対比は、なんかすごいなと思っていたんです。中で繰り広げられている最高峰のエンターテインメントとはまったく真逆の全力が、スタジアムの外でずーっと43周も。そういうところも大事かなと。でも、その全力とかひたむきさって、メンバー5人も猫ちゃんも変わらないんですよね。そういうものがトータルでスポーツだし、一歩一歩の大事さというか、そういうもので感じられるのがマラソンなのかなって」

――僕はテレビ中継でさえ、マラソンは最初からゴールまでずっと見続けたという記憶があまりなかったので、ライブ中に実際にずっと走っていたんだと、ゴールしたときには妙な感動がありました。

「分からないですけど、会場にいらっしゃった方は絶対に一瞬なり、一瞬どころじゃなくて猫ちゃんの存在を忘れるんですよ、ライブが楽しいから」

――はい、確かに僕は猫さんの存在を途中で忘れていました。

「でも、会場のビジョンにずーっと猫ちゃんの姿を出していたじゃないですか。もちろん、忘れてほしくないというのもあったんですけど、でも、ライブをすっごい楽しく見てて、ふっとビジョンを見たときに猫ちゃんがすごい苦しい表情をして走り続けていると気づいたときの、ちょっとした感動というか、なんかすごいな・頑張ってるなぁっていうことがより助長されるというか。一瞬記憶をなくしたところからの猫ひろし!というね」

「継続すること、一歩一歩の大事さがある」

――僕もメンバーのパフォーマンスに見入っていて、ふと画面を見たら猫さんが走っている。それがさっきは10kmだったのが、あれ、もう30kmも走っている。

「そうそう。うわぁ、この間もずっと走っていたんだと。何かリスペクトにも似たものがその瞬間って生まれるじゃないですか。それって結構、感動する感情とか、尊敬する感情とかを呼び起こすにはいい手法だなと思いました。1回忘れさせるというのが。忘れさせてパッと見たときに『あーっ!』という気づきがあるという、そこが何かいいなと思っていました」

――なるほど、1回忘れさせる、ですか。

「僕なんかはスポーツが好きでよくテレビとかでも見ているんですけど、ザッピングしてて、あーマラソンやってるんだって見て、バーっとまた違うチャンネルとか見て、また何時間後かして見ると、まだ走ってるよ!みたいな。あぁ、この人たちずっと頑張ってたんだ、すごいな、ずっと走ってるんだっていう感動があるんですよね。その間、自分は何してたんだろうって思うと、ご飯食べて、居眠りして、とか考えると、ずーっと孤独な戦いを繰り広げていたんだって」

――そうですよね、ももクロちゃんのライブを見て浮かれている間、猫さんはずーっと走っていたんだと。しかも周回コースでしたから、相当きつかったと思います。

「でも、そこに何が見えるかというと、継続することの大事さとか、継続は力なりというか、一歩一歩の大事さがある。何人の方が気づいてくれたかは分からないですが、そこにスポーツというものを気づいてくれたらと思っていました。結局、夏場ということもありましたし、3時間何分かかって猫ちゃんのベストタイムではないけど、今回は数字じゃないんですよね。別に自分の記録を破る必要はまったくない、ただ走り続けること、ゴールすることを頑張ってくださいということをお願いしていました」

――ただ、その感動的なゴールがあったにも関わらず、これは時間がなかったからかもしれないのですが、メンバーの猫さんへの対応が割と雑だったのが……(笑)

「はいはい、雑でしたね(笑)。時間がなかったのも確かだったんですが、あそこで丁重に扱うのは猫ちゃんらしくない。彼はやっぱり芸人ですから、そこを感動的にやるのは好きじゃない。芸人は芸人ですから、残なく扱われるのが芸人にとってはおいしいと、僕は思うんです。だから、猫ちゃんにはひと言だけお願いしますって言ったら、猫ちゃんは『芸人は本当はすごいんです!』というのを言えた。あれはすべての芸人に対する彼なりのメッセージだったと思うんです。それを丁重に扱って感動的にするのは、猫ひろしにとっても衛生的に良くないと思います(笑)。ももクロにとっても良くないと思うし、何より僕が好きじゃない。あえて残なくしました(笑)」

――感動的なシーンから一転して雑に扱って、「はい、ありがとうございましたー」って……

「『はい、はい、休んでてー』っていうやつね(笑)。そこはね、ももクロのキャラだからできることもありますよね。他のアーティストさんだったらあまり残なくできないこともあると思うんですが、ももクロって結構そういうことができるから」

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