どうなる? 2014年F1開催地=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第12回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

高騰する開催権料

 さて、ここからが本題だが、開催が決まっているレースでもいつその権利を捨てることになるか分からない。と言うのは、ヨーロッパ圏内のレース以外は(主催者がエクレストンに支払う)開催権料が非常に高く、それが毎年10パーセントずつ上がっていく。例えばマレーシア、アブダビ、シンガポールといったレースはそろって60億円を超える開催権料を支払っており、国や自治体からの支援がなければとても続かない。それでもF1グランプリ開催に伴う経済効果は数百億円と言われており、なんとか開催料を捻出しているのが現状だ。これから先、新しく開催を希望する主催者に対しては、さらに高額な開催料を要求するはずだ(ちなみに豆知識として、イタリアGPは7億円、モナコGPに至っては開催料はただといわれている。モナコGPのないF1グランプリは考えられないからだろう。存在価値の問題だ)。

 しかし、こうして詰め込まれるF1グランプリ、チームや関係者は毎週空の旅で疲れもピークになる。もう少し理にかなった(つまり余裕のある)カレンダーにしてほしいと考えるのは当然だろう。

各シリーズの“スター・グランプリ”

 ところで、どのレース・シリーズでも宝物のようなレースが必ずひとつはある。F1グランプリはモナコ、インディはインディアナポリス500マイル(インディ500)、WECはル・マン24時間レースだ。こうしたビッグイベントは必ず5月か6月に行われるが、これには理由があるそうだ。つまり、長いシリーズの中だるみを引き締めるためだという。では、そのメインイベントが終わった後のシリーズは盛り下がらないのか、という心配が頭をもたげる。そこは心配ご無用。シリーズの性質上、終盤になって選手権争いが盛んになるため、盛り下がることはないという統計が出ている。

 ただ今年、WECを全戦取材していて、このシリーズはル・マン以降に行われるレースはややもすれば人気が下がる傾向にある。圧倒的強さを誇るアウディの快進撃がシリーズを単調にしている気はするが、昨年のようにトヨタが後半戦で勝利を重ねてくれば流れは変わるはずだ。しかし、それにしても他のレースに比べてル・マンの存在が大きすぎる。そこで一考。ル・マンをシリーズの最終戦に持ってくるのはどうだ? そうすればシリーズは最終戦に向けて確実に盛り上がる。ただ、ル・マンの日程変更が無理だとすれば、ル・マンの次のレースを開幕戦とし、年をまたいでのシリーズにするというのはどうだろう。日本の会社や学校は年度制を採用し、4月から翌年の3月までを1年度としているが、その例に倣えば、決して不可能なことではないと思うのだが……。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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