現在防御率1位―38歳黒田、進化の秘密

杉浦大介

通算355勝、サイ・ヤング賞4度の大投手を彷彿

 こうして話を聴いて行くと、30代も後半にして絶好調の黒田の“狂い咲き”の理由が分かり易く見えて来る。まずはローテーションを守れるだけの健康な身体を保ち続けていることが大きい。そこに制球力の安定と経験に裏打ちされた適応能力が加わり、打高投低のア・リーグの打者たちをも恐れさせる投手に進化して行った。年輪を重ねて熟成されるワインのように、より味わい深い投手になっているのだろう。
「黒田の投球フォームは日本人独特のものだから、アメリカ人投手との比較は難しいけど……2シームを望んだコースに投げられるという意味で、グレッグ・マダックスを思い出すな。ただ、黒田の方が球速とスプリッターのクオリティはやや上だろうけどね」
 最後に“黒田に似ていると思うピッチャーは?”と訊くと、スチュワート捕手は通算355勝、サイ・ヤング賞4度の大投手の名前を挙げて来た。

 もちろん絶好調のチームメートへのリップサービスもあるだろうし、打者との駆け引きの上手さではマダックスの方が上かもしれない。黒田は本格派、マダックスは技巧派とイメージもやや異なる。しかし、コーナーに丁寧に投げ分ける制球の良い投手という点で、昨今の黒田とマダックスは確かに被るところがある。

 振り返ればそのマダックスも、“精密機械”と呼ばれるほどのコントロールと適応能力を武器に、40歳のシーズンに15勝をマークした息の長い投手だった。だとすれば、黒田も……?
「常に最後の登板だと思って投げる」と語り続ける黒田は、先のことは本当に考えていないのだろう。しかし、歳を重ねるごとに質の上がるピッチングを、もうしばらく見続けていたいと考えているのは筆者だけではないはず。そしてそんなファンは、今ではニューヨークにも数多く存在するに違いないのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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