「不調」ボルトも高まる世界新の期待=敵はロシアの気候のみ!?

及川彩子

200メートルでは「18秒台」宣言

ボルトは200メートルで前人未到の18秒台を出すと宣言! モスクワで再び規格外のパフォーマンスを見せてくれるだろうか 【Getty Images】

 DLロンドン大会の後に、ボルトは200メートルで18秒台を目指すと宣言している。今季ベストとなる19秒73(追い風0.2メートル、7月6日のDLパリ大会)は自身の持つ世界記録は19秒19にも程遠い記録だ。しかし、ボルトは、自分はまだまだ記録が伸ばせるはずだとシーズン前から強気のコメント。調子の良さの手応えを感じているからこそ、出てきた言葉だろう。

 100メートル選手の印象が強いボルトだが、もともとは200メートル専門の選手。世界陸上は200メートルで5大会連続の出場となり、3連覇がかかる種目。常々、「200メートルはオレの種目。譲れない」と話しているように、今大会への意欲は非常に大きい。陸上関係者も「100メートル(で世界新記録)はムリだと思うけれど、200メートルならあり得るかもしれない」と期待を寄せる。

 ボルトを手こずらせるほどのライバル選手は見当たらない。あえて挙げるなら「モスクワの天候」だろうか。日が落ちるとジャケットが必要なほど急激に冷え込むと言われているが、寒さはスプリントに大敵。20度を下回ると、記録への期待は一気に失せてくるだろう。

スターの相次ぐ欠場で陸上界はボルト依存

 ゲイ、パウエルがドーピングにより不出場。その他にもブレーク、走高跳びのブランカ・ブラシッチ(クロアチア)、800メートル世界記録保持者でロンドン五輪金のデビッド・ルディシャ(ケニア)、同じくロンドン五輪金のジェシカ・エニス・ヒル(英国、7種)、サンヤ・リチャード・ロス(米国、400メートル)など、スター選手たちが相次いで欠場を表明している。出場予定の選手でも、アリソン・フェリックス(米国、200メートル)、アシュトン・イートン(米国、10種世界記録保持者)、アリエス・メリット(米国、110メートルハードル世界記録保持者)などは本調子とは言えず、金メダル争いに黄信号が灯っている状態。その分、ボルトに大きな注目とプレッシャーがかかっている。

 陸上界はボルトに大きく依存している状態で、気の毒な気もする。しかし、お祭り男のボルトだけに、モスクワでもわれわれを驚かせるような、規格外のパフォーマンスをしてくれることだろう。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント