平泳ぎで不振の渡部香生子を支えるもの=世界水泳バルセロナ2013

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筋力がアップし、泳ぎ方が変わる

平泳ぎで苦戦が続く渡部だが、200メートル個人メドレーでは自己ベストをマークした 【Getty Images】

 水泳の世界選手権第10日は29日、スペインのバルセロナで競泳の2日目が行われ、女子100メートル平泳ぎに出場した渡部香生子(JSS立石ダイワ)は1分09秒28の全体27位で予選敗退となった。レース後、渡部は「前半から遅かったので、うまく調整できていなかったと思う。最後まで泳ぎがかみ合わなかった」と涙交じりに振り返った。

 15歳(高校1年)で昨年のロンドン五輪女子200メートル平泳ぎに出場。準決勝で敗退したものの、大舞台での経験が彼女の成長をさらに促進させるはずだった。しかし渡部は、平泳ぎでなかなか結果を出せない現状に苦しんでいる。

 この日の予選、序盤から出遅れるとなかなかスピードが上がらない。50メートルを32秒79の同組最下位でターン。「泳ぎ自体がしっくりこなかった」と言う渡部は、結局追い上げることさえできずに、1分09秒28と今年4月の日本選手権から2秒近くタイムを落とし、全体27位に終わった。

 今大会はもともと200メートル個人メドレーでの代表権獲得。日本選手権の100メートル平泳ぎで2位に入っていたこともあり、同種目でも出場するチャンスを得たが、結果は惨敗に終わった。同じ日本選手権では200メートルでもB決勝止まりに終わっており、厳しい状況が続いている。

 原因は「筋力がアップしたことによって泳ぎ方が変わってきた」ことだという。現在高校2年の彼女はまだ成長途上にある。練習を重ねるほど筋力がつき、体が大きくなる。その結果、最も水の抵抗を受けやすい平泳ぎでは、以前のような伸びのある泳ぎができなくなってしまった。もちろん大人へと体が成長するのは誰もが通る道。それに合わせて変化を受け入れ、対応していかなければならないのだが、渡部自身はまだ戸惑っているように感じられる。

好調の個人メドレー レース後には笑顔も

 その一方で、個人メドレーでは好調を維持している。そのことが、今の渡部に精神面で大きな意味を持っているようだ。彼女はいまでこそ平泳ぎ専門の選手として認識されているが、中学1年生までは個人メドレー専門の選手だった。肩を故障したことで、肩に負担が少ない平泳ぎに転向したという過去を持つ。今年から平泳ぎだけではなく、200メートル個人メドレーにも挑戦することを明らかにすると、4月の日本選手権でいきなり優勝。派遣標準記録は切れなかったが、インターナショナル標準Cを突破して世界選手権の出場権を獲得した。「いつも平泳ぎばかりだったので個人メドレーは新鮮な気持ちだった。優勝したかったし、そのチャンスもあったので逃さないように頑張った。これから徐々にタイムを上げていければ」とレース後に語り、笑顔を見せていた。さらに今年5月のジャパンオープンでも、同種目で高校新記録(2分11秒96)をマークし優勝。自己ベストを出したことで大きな自信をつかんだようだった。

 世界選手権では初日に行われた予選を全体9位で通過。準決勝で5月に出した高校新記録を更新したが11位に終わり、決勝には進めなかった。記録に対して「自己ベストより、決勝が目標だった。素直に喜べない」と唇をかんだものの、「個人メドレーでも楽しくレースができている」と語っており、今後の挑戦にも意欲を燃やしているようだった。

 平泳ぎで不振に陥っている渡部にとって、個人メドレーの存在は大きな支えとなっている。平泳ぎ後と個人メドレー後の表情がまるで違う。もちろん結果が出ている・出ていないの差でもあるのだが、平泳ぎ後は涙顔、個人メドレー後は満足げな表情が、最近の定番となりつつある。

 10代後半という年齢はアスリートにとって難しい時期だ。体の成長が著しいだけに、この変化に対応できないと、メンタルにまで影響を及ぼす。もちろん平泳ぎで五輪、個人メドレーで世界選手権への出場権を勝ち取った渡部の可能性に疑問の余地はない。この悔しさを糧にどこまで成長を遂げられるのか。今後に向けて真価が問われることになるだろう。

<了>

(文・大橋護良/スポーツナビ)
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