入江陵介、「初心」に返って再び頂点を=世界水泳バルセロナ2013

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「なんとなく孤独を感じていた」

4月の日本選手権では国内で久々の敗戦。しかし入江は、萩野(右)の台頭を歓迎している 【写真:北村大樹/アフロスポーツ】

――今年4月の日本選手権では、100メートルで萩野選手に敗れてしまい、国内では久しぶりの敗戦でした。そのときはどういう気持ちでしたか?

 負けたことはすごく悔しかったですね。タイムもあまり良くなかった。ただ、タイムが良くて負けたらもっと悔しさは大きかったと思います。自分自身、レースに向かう際に100パーセントの状態で臨めなかったので、「やっぱりか」という気持ちでした。

――ここ最近の国内で敵なしという状況は、入江選手にとってやはり物足りないものでしたか?

 悪い意味で精神的にはすごく楽でしたね。200メートルに関しては2位の選手とけっこうタイム差がありました。ただ、萩野選手とはほとんど差がなくなってきているので、国内でもつねに国際大会並みの競り合いができるし、良いシミュレーションになるなと思います。

――ライバル不在だったとき、どのようにモチベーションを維持していたのですか?

 つねに自分自身との戦いでした。「このタイムで入って、こういうレースをしよう」と、自分の中でイメージを描きながら、周りを気にせずにやっていました。でも、萩野選手みたいな選手が出てきたことで、相手にも勝たなきゃいけないということが追加されたので、世界と戦うためには良い選手が出てきてくれたなと思っています。

――日本選手権のあとに、入江選手は「水泳を好きになれていない自分がいる」ということをおっしゃっていました。そのときはメンタル面で何か問題があったのですか?

 100パーセントではない状態だったし、なんとなく孤独も感じていたんです。いろいろな悩みも抱えていて、どんどん自分を追い込んでしまい、なかなか「さあ、勝つぞ!」という気持ちになれなかった。「とりあえず早くこの試合は終わらせたい」という気持ちが先走ってしまい、集中しきれていなかったんです。

――どちらかというとため込みやすいタイプなのですか?

 そうですね。ため込みやすいですし、誰かに相談に乗ってもらうということもあるんですけど、なかなか同じ悩みを抱えている人っていないんです。

――確かにそうですね

 心理学で習ったんですよ。「人の気持ちを完全に理解できることはない」と。人の気持ちを理解できるというのは、結果として上から見ちゃっていると言われて(笑)。100人いたら100人が同じ悩みを抱えていることはないですし、解決策は自分で見つけるしかない。そういう考え方なんですよね。それでどんどんため込んで、自分のキャパシティーをオーバーしてしまうタイプなんです。

――そういうときに発散したりはしないのですか?

 発散したりはできるんですけど、結局は水に入ると一緒なんです(苦笑)。オンとオフは区切っているので、水泳から離れているときはすごくワイワイできるんですけど、水の中に入るといろいろ考え込んでしまうんです。

「3年後のリオ五輪につながるレースをできたら」

「五輪より上の結果を狙いたい」と意気込む。目指すは頂点のみだ 【スポーツナビ】

――ジャパンオープン後の壮行会で、今回の世界選手権のテーマを『初心』としていましたが、これにはどういう意味が込められているのですか?

 ロンドン五輪が終わって、メダリストというのはもう過去のことじゃないですか。また一から自分を作り直したいという気持ちでオーストラリアにも行きましたし、初心に返ってリオ五輪までを過ごしたいという意味で「初心」にしました。

――初心に戻ってみようと思ったきっかけは?

 なかなか区切りをつけられなかった自分がいたんです。そういう意味でオーストラリアに行ったのはあるんですけど、自分自身の中で何かロンドン五輪とそれ以降を区切りたいという思いが強かったんです。

――現在、その区切りはうまくつけられているのですか?

 なんだかんだで引きずっている部分はあるとは思います。そこが悩みなのかもしれないですね。しっかりとここから1、2年かけて3年後のリオ五輪に向けて、自分を少しずつ作っていければいいのかなと。

――引きずっているのは結果に対する悔しさとかそういうもの?

 それもあるんですが、どう言ったらいいんでしょうかね……。自分でもうまく言葉にできないです。

――ご自身の中で、今後選手としての伸びしろはどういった部分にあると考えていますか?

 バサロキックはまだまだなので、そこは伸びしろなのかなと思います。あとはやはり体重も軽いですし、線も細いので、ただウエイトトレーニングをするだけではなく、自分に合ったものを3年間かけて作り上げていきたいという気持ちが強いですね。陸上トレーニングもいままでとは違うやり方でやっています。そこがうまくハマってくればより力がついてくると思います。

――ライバルとして意識する選手はいますか?

 五輪に出場した選手も引退せずに出てくるので、昨年負けた選手にしっかり勝てるようにしたいですね。また萩野選手や若い選手も出てきているので、そこにも負けないようにしたいと思います。

――それでは最後に、世界選手権での具体的な目標を聞かせてください

 昨年の五輪より上の結果を狙いたいです。タイムも順位も落としてしまったら、ダメだと思うので、最低限それは狙いたいと思います。あとは3年後のリオ五輪につながるレースをできたらなと。1年、1年結果を残すことも大事ですが、良い課題を持ちながら、終了後にリオ五輪へ向けて収穫になったと思える大会にしたいです。

<了>

(取材・大橋護良/スポーツナビ)

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