忘れられない“NY夢一夜”の物語=ダル、岩隈、松井……それぞれの球宴

杉浦大介

松井氏は“地元”開催に貴重なアクセント

登板がなかったダルビッシュ(左)と岩隈だが、行事にはすべて参加するなど夢の球宴を楽しんでいた 【写真は共同】

 一方、ダルビッシュは直前にDL入りし、2日前の日曜日に先発した岩隈久志は登板不可となったため、今年の球宴に日本人選手がプレーする姿はなかった。
 それでも2人は会見、パレード、写真撮影などのイベントにはすべて参加。随所に浮かべた明るい表情を見る限り、「凄い選手がいっぱいいて、話もできる。意味のある休みだと思う」(ダルビッシュ)、「少しずつ名前を覚えてもらえている感じがする」(岩隈)といった本人たちの言葉に嘘はなかっただろう。

 そしてオールスター当日には、日本のテレビ放送のゲストを務めた松井秀喜氏もシティ・フィールドに登場した。ヤンキース時代の同僚リベラ、ロビンソン・カノ、エンジェルス時代にチームメートだったトリー・ハンターらとア・リーグのベンチ前で交歓。普段以上に大量に集まった日本メディアを湧かせた松井は、彼にとっても地元での球宴に貴重なアクセントを添えてくれた。

黒田落選はやはり疑問も後半戦の糧に

 ただ、日本選手絡みで1つだけ残念なのは、今季前半戦でア・リーグ2位の防御率を残すなど、投球内容的にはダルビッシュ、岩隈に勝るとも劣らなかったヤンキースの黒田博樹投手が結局は選ばれなかったことだ。
「(黒田は)最後の5人ほどのリストに名前はあったが、ティルマンを選んだ。オールスターまでに11勝を挙げた投手を外すのは難しかった」
 前日の会見時にはア・リーグのリーランド監督に、アメリカメディアの間から質問が飛ぶ一幕も。ティルマンは確かに今季勝ち星こそ多いが、一般的に投手の投球内容をより正確に指し示すとされる防御率、WHIPでは大きく黒田に遅れをとっている。それだけに、少々解せない選出でもあった。

 オールドファッションな老雄リーランドが勝ち星に拘ったのか、あるいは他に理由があったのか。ただ、いずれにしても、38歳の黒田にとって4日間のオールスターブレイクが良い休養になったのも事実だろう。
“意外な落選”も、考えようによっては次へのステップ。シーズン終盤頃、「黒田は球宴に出ていなかったのか」と驚いて振り返られるような働きを後半戦でも期待したいところである。

2/2ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント