ブラジル完勝で見えたスペイン攻略法=明暗分けたサイドの攻防とコンディション

後藤健生

特筆すべきグスタボの貢献

特筆すべきなのはグスタボの貢献度。中盤でのボール奪取、カバーリングなどチームに欠かせない存在だった 【Getty Images】

 さて、優勝したブラジル。大会前は、国内では批判的な空気が強かったが、結果を出したこと、得点不足がうんぬんされていたフレッジやネイマールが活躍したことで評価は高まることだろう。
 特筆しておきたいのが、ボランチのルイス・グスタボである。
「ブラジル」というと「攻撃サッカー」という言葉を思い出すだろう。だが、ブラジルはこれまでも優れたボランチがいるときに好成績を残している。その意味で、今大会で第1ボランチ(より守備的なボランチ)を務めたグスタボの存在は大きい。

 たとえば、決勝戦ではダニエウ・アウベスやマルセロが高い位置を取ったことがスペインを圧倒できた理由の一つだった。だが、なぜ彼らが安心して攻撃参加できたのか。それはグスタボのカバーがあったからだ。

 サイドバックが上がった裏のスペースをグスタボが自ら埋める場合もあるし、あるいは、グスタボが中央をカバーすることでセンターバックのチアゴ・シウバやダビド・ルイスがサイドバックの裏をカバーする場合もある。

 中盤でのボール奪取能力も素晴らしい。特筆すべきは反則をしないでボールを奪う能力が高いことだ。そして、決勝戦では奪ったボールを早いタイミングで前線に供給して、その展開能力の高さも見せつけた。

日程が大きな影響を与える

 圧倒的な強さを見せたブラジル。しかし、この大会ではブラジルが圧倒的に有利な状況で戦ったのも事実だ。たとえば、決勝戦の相手のスペインは準決勝を暑いフォルタレーザで120分戦って、そして中2日で決勝戦だったのだ。

 ブラジルサッカー史上最強は、予選から本大会決勝まで全勝で優勝した1970年メキシコW杯の時のチームだろう(ペレ、リベリーノ、トスタンなど)。W杯決勝ではイタリアを4−1で一蹴した。しかし、イタリアは準決勝で西ドイツと延長を戦っていた(1−1で延長に入り、4−3でイタリアが勝利)。イタリア人はいまでも「あれさえなければ、ブラジルにも勝てた」と言う。

 W杯は、優勝するまで7試合戦わなければならない大会だが、開幕から決勝までは32日間もある。だが、コンフェデ杯の場合は16日間で5試合を戦うだけに、日程上の有利不利が大きな影響を与えるのだ(日本がイタリアに善戦できたのも、相手のイタリアが中2日の日程だったからだ)。

 そして、他の参加国がW杯予選などの日程を終えてから急きょブラジルに飛んで、強行日程の中で戦っていたのに対して、ブラジルは国内でしっかり準備のキャンプを張ってホームで戦った。従って、今大会の結果だけを見て「ブラジル最強」と言うこともできないだろう。

 スペインも、良いコンディションで戦えば、このような惨敗を喫するはずもない。当然、来年はリベンジを狙ってくるはずだ。しかし、いずれにしても開催国が強いのは、大会が盛り上がるためには必要条件。今日のところは、とりあえずブラジルの快勝を祝っておこう。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、観戦試合数はまもなく4800。EURO(欧州選手権)は1980年イタリア大会を初めて観戦。今回で7回目。ポーランドに初めて行ったのは、74年の西ドイツW杯のとき。ソ連経由でワルシャワに立ち寄ってから西ドイツ(当時)に入った。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント