宇佐美が下した古巣・G大阪復帰の決断=ドイツで失った輝きを取り戻すために

高村美砂

古巣・G大阪で再始動した宇佐美。新たな決意を胸にG大阪のエンブレムが入った練習着に袖を通した 【写真は共同】

 2年ぶりに復帰を決めたガンバ大阪での始動日となった6月18日の朝。慣れ親しんだクラブハウスに到着し、G大阪のエンブレムが入った練習着に袖を通した瞬間、宇佐美貴史はG大阪への復帰を実感したという。と同時に、胸に新たな決意を宿らせたそうだ。

「ドイツでの2年間はホンマに悔しかった。だけど、悔しさを感じた分、『もっと練習してうまくなりたい』という欲が大きくなった。それをガンバで生かさなければいけないと思っている。日本にいたときからずっと『サッカー選手は練習が一番』と思っていたけど、それはドイツで確信に変わった。どれだけスペシャルな選手でも、練習から一切手を抜かないし、だから結果を残すことができる。それを目の当たりにしてきたからこそ、ガンバでもしっかり練習したい」

「日本に帰るとすればガンバしかなかった」

 復帰の決断には正直、頭を悩ませたと言う。ホッフェンハイムへの期限付き移籍の終了に伴って、保有元であるG大阪はもちろんのこと、いくつかのヨーロッパのクラブが彼に興味を示したからだ。それらの話を順に聞きながら、頭に浮かんだ考えは2つ。「このままヨーロッパに残ってチャレンジを続けるか。ガンバに復帰するか」

“ヨーロッパ”について、ドイツ以外の国も含めてある程度、柔軟に考えてはいたが、日本への復帰に関しては「ガンバ以外のチームは思い浮かばなかった」と言う。例え、そのG大阪が今季、J2リーグでの戦いを強いられていても。

「ガンバがどのステージで戦っているのかは全く関係ない。僕にとってガンバはガンバ。だから、日本に帰るとすればガンバしか考えなかった。その上で、(ヨーロッパかガンバの)どちらで自分の力を蓄え直すのかということにすごく悩んだけど、いまの自分が選手としてより大きくなるには、ガンバに戻った方がいいという結論にたどり着いた。もちろん、人それぞれいろんな考え方があると思う。だけど、僕にはこの方法が再び世界を目指すためには最善の選択だったと思っている」

“特別なクラブ”バイエルンへの移籍

 決断の理由を語るにあたり、ドイツでの2年を簡単に振り返ってみる。
 彼にとってプロ3年目のシーズンとなった2011年。宇佐美はある海外クラブからビッグオファーを受けた。そのクラブとは、世界的にも強豪クラブとして知られ、12−13シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制することになるバイエルン・ミュンヘンだった。幼少のころから才能を高く評価され、その成長に注目を集めてきた宇佐美ゆえ、それまでもいくつかの海外クラブが彼に興味を示し、練習参加などを求めてきたことはあった。だが、そのときは「全く心が動かなかった」と本人。その証拠に、考えるまでもなく、すべてのオファーを断っている。だがバイエルンだけは違った。

「親の影響もあって、僕は子どものころからずっとガンバファンでしたからね。3才のころから練習場にも通ったし、何度も万博記念競技場にも足を運んだ。その後、ジュニアユースチームに加入してからはまた違った愛着を抱くようになり、プロになって『いつかガンバの顔になろう、なりたい』と思いを抱くようになった。だからこそ、トップに昇格してわずか2年半でそのガンバを離れていいのかすごく悩んだ。でもオファーをくれたのが世界的なビッグクラブ、バイエルンだったから。以前から海外のクラブや、CLでプレーすることを思い描いてきた僕にとってバイエルンはそれを実現する可能性があるクラブ。そんなビッグチャンスを逃す自分を見たくはなかった」

 その思いを胸に、宇佐美は2011年7月、ドイツへと旅立つ。想像していた通り、バイエルンに集う選手たちはハイレベルで、出場のチャンスはなかなか巡ってこなかったが、日々の練習の中から、名だたるスタープレーヤーと同じピッチに立ち、そのプレーを間近に感じることは「何にも代え難い、大きな刺激だった」と言う。残念ながらそのバイエルンでの挑戦は1年で幕を閉じたが、世界を肌で知り、わずかな時間ながらあこがれのCLの、しかも決勝の舞台でベンチ入りを果たせたことは、彼の『世界』ヘの欲を募らせた。

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著者プロフィール

関西一円の『サッカー』を応援しようとJリーグ発足にあわせて発刊された、関西サッカー応援誌『GAM』『KAPPOS』の発行・編集に携わった後、同雑誌の休刊に伴い、1998年からフリーライターに。現在はガンバ大阪、ヴィッセル神戸を中心に取材を展開。イヤーブックやマッチデーブログラムなどクラブのオフィシャル媒体を中心に執筆活動を行なう。選手やスタッフなど『人』にスポットをあてた記事がほとんど。『サッカーダイジェスト』での宇佐美貴史のコラム連載は10年に及び、150回を超えた。兵庫県西宮市生まれ、大阪育ち。現在は神戸在住。

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